職業アイドレス

L:善なるマッダー = {

 t:名称 = 善なるマッダー(職業)

 t:要点 = 世界爆破,慈悲深い,老人

 t:周辺環境 = 羅幻

 

■:善なるマッダーのインデックス

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http://hasta.sakura.ne.jp/I=Dress/Kingdom/Tree/Mainte/MI/MI01.jpg?lightbox=c.jpg

(イラスト:ぱんくす。クリックすると大き目のイラストになります)

■1:安全第一のネイションステイト

「フゥーハハハハハ! 世界爆破のマァッドサイエンティィィストッッ、ここに降臨!」

「自作自演の厨二病、乙」

「どうした、ひぃー↑ しょー↓ よぉー↑ 何か言いたい事でもあるのかぁー?」

「うるさいバカ、勝手にAIモデルに人の脳科学データ使って! あと秘書って言うなぁ!」

(18:いわゆる御約束)

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 ――四条あやという人間がいる。設定的には羅幻王国の藩国文族の長である。

 

 レアキャラであった。

 メタな事を言えば名古屋の飲み会にしか顔を出さず、生活ゲームやナンバリングイベントなどにも食指を伸ばさない出不精のため、無名世界観では知る人ぞ知るといった知名度の低い人間である。

 

 しかし、別のいくつかのコミュニティにおいては歴戦のデュエリストにして、卓越の同人文筆家として名を知られていた。

 飲み会で声を掛けられた四条くんが「四条さんのSSサイト良く読んでました。ブクマしてます」と伝えられて『恥ずか死』するという面白イベントは、稀に発生する名古屋の風物詩とも言えよう。

 

 彼は藩国の設立メンバーであり、今の現状があるのは彼のおかげでもあり、藩国のみならず共和国の流通を支えた陰の功労者ということはあまり知られていない。

 実は、彼は人と環境と科学技術に対し『綿密な安全性』を保つべく、今の現在を見通し数々の布石を打っていたのである。

 今回はその密やかな布石の数々の内、公開可能な極一部を紹介しよう。

 
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 ――毎度お馴染み、羅幻王国

 人呼んで輸送の国。ワリと地味。重要度に比せず戦力が低い、整備と後方兵站を得意とする支援系藩国である。

 【輸送,だけ,開き直り】などと、ある意味突っ込まれ所満載だが、特化していると言う事は強みであった。

 ところで、この藩国は更に目立たぬ、もう一つの貴重な属性を併せ持っていた。

 

 極めて『安全』なのである。

 

 藩国の運命指針(#イグドラシルツリー)にも【悪しき可能性(#強制イベント)が存在しない】というNWでもほとんど無い抜群の安全律を誇り、警官・巡査・刑事・税関施設を擁して【共和国最高の治安維持(#T17評価88)・犯罪捜査能力】を保っている。

 

 地政学的にはFEG・鍋の国・無名騎士藩国と言った高い戦力を持った藩国、世界忍者国・リワマヒ国と言った高い食料生産性を持った藩国に囲まれる東京都という地理であり、外交的にも【共和国全ての藩国(だけでなく帝國・星鋼京)とも聯合】を結ぶ、大規模国交政策を構築している。

 

 内政的・技術的には、今までの歴史的経緯から【技術的爆発率0】であると爆発対策として安定しており、マッドサイエンティストを擁する共和国随一の整備国として人員を派遣し整備支援と共に、聯合国の燃料消費の削減(累積実績:数百万t)に寄与している。

 

 これらは事実上、摂政蓮田屋の先見性と文族長四条の万全の布石により【爆発率ゼロの安全藩国】として運営されていたということでもあった。

 きっと地味で目立たないと言う事は『安全の裏返し』なのだろう。彼らは地味である事を却って誇りに思っていた。

■2:善因善果のメンテナンス

「フゥーハハハハハ! 我が秘書よ、俺はまたしても新たなる未来発明を開発してしまったぞ!」

「10年経っても変わらないわね、このイイ歳した扶養家族」

「ゲフッッッ! ――だ、だが凡人には孤高の天才によるモーショントレースなぞ……」

「はいはい、本当に天才だったら凡人にも分かり易く説明出来るはずよね?」

(28:いわゆる修羅場)

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 そしてとある時、その藩国の政庁。

 ある種、微妙な顔をした摂政の目の前で、老若男女の有識者――羅幻王国の整備士・マッドサイエンティストたちは考え、そして唸っていた。

 

 彼らは、いわゆる『正義』などといった『耳障りの良い言葉を胡散臭い』と量るぐらいには慎重(もしくは疑り深い)だったが、自己の藩国はもちろん自国を通して世界に役立てる事は無いかと悩んでいたのである。マッドはマッドなりに『善意と良識』のある面々なのだから面白い。

 

 そもそも『善(Goodness)』という曖昧な概念について辞書を紐解けば、道徳的な価値としての良さ。多くの人が認識する社会的な規範(所属する集団のルール)に『是』とされる存在、行為などと記述してある。

 

 前章にも挙げたが、羅幻王国は共和国随一の整備系藩国として毎期(#ターン)機械系の各藩国に人員を派遣し、整備支援や復興支援を随時行っている。

 メタゲーム的な事を言えば、整備フェイズは派遣した人員により共和国のシェアの半ばを越える。そもそも羅幻王国は『メインフェイズ『以外』に限っては働きすぎ』である。

 

 その結果、さまざまな藩国の機械を整備し続けていた知識と経験が蓄積された実績として、

・勘と気配でインフララインの不具合を見つける。

・調子の悪い機械と添い寝すると不調部分が分かる。

・機械のツンデレを常に把握して良好な状態を保つ。

・開発物や機材に萌えキャラや伴侶の名前を(勝手に)付けて愛でる。

・お約束と称して、定期的に頭上を世界爆破(頭髪をアフロに)して登場する、などなど。

 

 もはや他国の人間にしてみれば、彼ら整備士・マッドサイエンティストたちは何の異能も魔術も保持していないのにも拘らず、高い整備力を有する『ぶっちゃけアイツらHENTAI的マッド』という領域の認識に達しており、マッドたちはその優れた職能を実に生き生きとNWの為・みんなの為に活用していた。

 

 ――哲学において『善とは何か』を議論探求する倫理学があり、反対概念は『煩悩』として相対化される。ならば『善』は心の問題とも言えるのでは無いだろうか。

 つまり、彼らは何か『善い事』をしたいと思ってはいたが、既に『良い事』をしているとは、思い至らないのであった――

 

 正に天然。これぞ善なるマッド。ある意味可愛い。

 ……しかし、為政者の立場としては余りに難儀な国民たちの姿には正直、眼鏡の向こうで目を回さざるを得ない。微妙な顔をしていた理由である。

 そこに珍しく、滅多に顔を出さないレアキャラ文族長、四条あやから声が掛けられた。

 

「――そうですね、試しに技術発表会とかやってみましょうよ。ココだけの話、面白い研究をしてる女子高生や厨二病夫妻がいまして」

「以前、政庁に『萌えの理念を実証する人工知能』(データ・グラフの数式の曲線美にしか魅力を感じない)とか、『ヤマ勘の概念を実装した検索アーカイブ』(ご丁寧にもディスプレイ内でダイスを振ったり棒倒しで判断している)とか、『遊び心あふれすぎて、まるで役に立たない技術』を得意満面なドヤ顔で持ち込まれた事もあるんですよ!?」

 

 深淵を覗き見た、まるで【この世の終わり】の如き表情を返す蓮田屋。

 

「にゅいにゅい、はすたさん。世の中には『無用の用』って言葉だって、あるんですぜ?」

 

 ……やはり、為政者は眼鏡の向こうで目を回さざるを得ない。ぐるぐる。

■3:百家争鳴のエキシビジョン

「――ロート、余り根を詰めると身体に悪いぞ。もう無理が利く歳ではあるまい」

「女性に年齢の事は禁句だろ! まったく……気を使うなんて珍しいわね。アンタも3DARの研究、大変でしょ?」

「ふ、ふん、我が秘書の心身のメンテナンスも、この俺の大切な職務だからな。……コーヒー飲むか?」

「いただくわ、ありがと。そう言えば、ちょっとしたアイデアなんだけど――」

(38:いわゆる分岐点)

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 某後日、大規模商業施設『トイボックスシティ』アミューズメントセンター4Fコンベションフロア。

 普段は企業関連や文化事業の展示・会議会場、同人誌即売会などに用いられるこの会場も、今日は多くの技術者や研究者たちが自己の研究成果を発表する機会を求めてあふれ返り、主催する政庁の事務官や企業関係者たちもそれを補佐、ないし出資交渉・権利購入する為に多くの人と猫が参加していた。

 普段は警察署に詰めている王猫マヘス様も、今日は会場警備主任として、やり甲斐深く熱心に周囲へ気を配っている。

 

「良くも悪くもHENTAIしかいない……」

「にゅいっす。思ったよりもはるかに『スゴいの』が集まりましたねぇ」

 

 そして、藩国首脳のこの2人。

 滅多に顔を出さないレアキャラ文族長:四条あやと、いつでもどこでも顔を出すラスボス摂政:蓮田屋藤乃である。

 

 「試しに技術発表会とかやってみましょうよ」という四条の発言に、藩国主催の研究発表イベントを起こしてみた蓮田屋ではあったが、余りにも『頑張りすぎた』研究者たちに顔を覆わんばかりである。

(なお、出不精の四条は言いだしっぺという事で珍しく引っ張り出された)

 
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「――このビーズ状の炭素素材は、電気分解で原子レベルにした炭素を独自研究でセッティングした適切な音波と量を真空中で放射する事により、球状・中空構造に再構築された物です。極小サイズで薄いガラス膜のシャボン玉であると連想してもらえると理解がしやすいと思うのですが、ガラス膜の部分がナノ単位であり、内部が真空のため全体としての比重は空気よりも軽いのが特徴です」

 

 ……どうみても『立方晶窒化炭素(cubic carbon nitride)』です。本当にありがとうございました。

 炭素が一部窒素に置換されたもので緊密な結晶構造からダイヤモンドをしのぐ硬度を持つ理論上の物質である。いや、だった。

 彼女はまだ気がついていないが、真空中で容器に入れて焼結させれば『軽量で堅牢な構造材』に、ひも状に加工すれば『カーボンナノチューブの極細剛性ケーブル』に化ける可能性がある。

 

「――なお、原材料は現在のところは炭素棒を使用していますが、概念上では大気中の二酸化炭素を抽出してプラントを形成することにより、コストパフォーマンスと大気環境において一定の利益水準を保てる物と――」

 「えー、摂政の蓮田屋です。貴女の研究は藩国で保障しますので、政庁事務官は所定の手続き、及び対応の程をお願いします」

 

 思わず手を上げて発言した藩国摂政の高い評価に、可愛らしく「わーい」と歳相応に歓声を上げる『女子高生の研究者』がセーラー服の上に羽織った白衣をぱたぱた翻して喜んでる様を見て、蓮田屋は内心頭を抱えていた。

 このまま行けば、宇宙エレベータ(天空のケーブルカー)の一つも軽く出来そうなのである。

 

 宇宙エレベータとは、軽量剛性のケーブルを直上に張って地上と宇宙を結ぶエレベータのような施設である。

 地上・宇宙間の輸送はロケットやマスドライバー等の打ち上げに頼っている現状、輸送の民としては更なる安全性や環境への影響・コストパフォーマンスの向上を検討したい所だ。

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「いやー、さっきの娘さんもスゴかったですけれど、多種多様に色々出て来ましたねー。生産系だけで、ウナギの完全養殖計画・クロマグロのプール養殖技術・サンゴの移植ノウハウ・乾燥地域用の種蒔シートの開発・石油生成藻類のオーランチオキトリウムの培養・大気中湿度から水分の抽出装置とか色々と。流石に海に植える海小麦には吹きましたが。下手すりゃ食糧自給率が大幅に上昇しそうですな」

 

 何というか。研究者よ、そんなに出番が欲しかったか。

 今まで溜め込んでた研究成果や欲求不満が一度にはっちゃけてしまっている。

 これまで研究者たちへも適度に機会を設ける(ガス抜きをする)べきだったと、蓮田屋は心底頭を抱えていた。

 

 工業的には、量子コンピュータとアンチプロトンリアクターの基礎概念・ミクロン単位の超々小型バネやネジ・超小型コアレスモーター・塗布型の液体太陽電池・実用レベルの電磁推進船舶などなど。

 環境的には、ヒートアイランド緩和用のマイクロドライミスト加湿器・苔類による壁面緑化技術・自動調光ガラス調光ミラー・海岸保護用の鉄鋼スラグなどなどなど。さらには、数は少ないが遠隔操作内視装置などの、医療系の発表も少なくは無い。

 ……総じて技術の開発に遊び心あふれすぎである。

 加えて全て『枯れた技術の積み重ね』であるため、爆発無用・危険率皆無の上、不安定なTLO開発に対する真逆の文化思想であった。

 確かに。テックレベルとは無駄に上げれば良いと言う物ではないのである。

 

 ――そしてここで、冒頭の発言に戻る。

 

「良くも悪くもHENTAIしかいない……」

「えーとです例えば。先日の経済誌でウチ産のジュースの『プルトップ缶』を見て、他国の方々が戦慄してたじゃないですか」

 

 ジュースを開けやすくする為の小さな溝の事である。爪が立て易くなるアレ。それがどうした。

 

「きっとウチは、商業と輸送ばっかりやってたから『変に細かい所』ばかりに、察しとか慮りが得意なんですよ」

 

 それでイイのかぐぬーと唸りつつ、これも『是』であるんじゃないかと、何とか国民を信じる自分を納得させようとしていた蓮田屋だったが、ふと。

 そういえば、こういう時に必ずはっちゃける自称:天災科学者がこの場にいない。そして司会のアナウンス。

 

「次は、ドクター<<アズキLove>>無畏による『アイドルの歌によるスピリチア、平和活用とサウンドエナジー理論』について――」

「引っぱたきに行った方が良いのかしら」

「にゅい、ご随意に」

 

 ――歌には平和をもたらす力がある! アイドルとは愛であり、愛とはアイドルであr……な、なにをするきさまらー! ――

■4:千思万考のガバナンス

「――この俺が、文族長の紹介で『機関』へMA技術の講師として招聘された……だと……?」

「『機関』じゃなくて計画組織中の『藩国研究教育機構』よ。もういい歳なんだから厨二病発言は控えなさい」

「……軽く十年は先の事とは言え、問題は、この俺如きに人へ物を教える事が出来る器量があるか、どうかだ」

「胸を張りなさい。アンタが頑張ってきたのは私が一番よく知ってる」

(48:いわゆる成熟期)

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『善なるマッダー』とは、高い整備特化評価を持ち、敬意を込めて(あるいは困った様な半笑いと共に)呼ばれる、整備・研究系の最高位職業としての藩国内での敬称である。

 

 一般の研究者との違いは科学が科学技術によって発展するのに対して、彼ら、高い技術ノウハウと倫理観を備えた羅幻王国の技術研究者たちの技術は彼ら自身の精神的成長によって発展する事に真髄がある。

 彼らは研究成果は二の次と考えている。哲学の入った学問ともいえる。別名『良心ある科学』とも呼ばれており、善なるマッダーは自ら発案した物に責任を持たなくてはならないからである。

 良心無く研究をすすめるものは、後述される『藩国研究教育機構』より除名・追放される事もある。

 

 『藩国研究教育機構』とは、いわゆる『科学技術の暴走を抑制する』為に設立された、研究者たちの互助組織である。

 彼ら善なるマッダーは、あの商業国家の民にしては、お金に対する観念が薄い(例えば、知的所有権は主張するが、特許使用料を取ろうとしない等)ため、本来は彼らへの資金的・設備的な支援を目的としたものであったが、別の側面として『TLO等、危険技術の開発防止機構』としても機能していた。

 

●TLO技術の禁止規定

※TLO(Technology level over):現存する技術を遥かに超えた性能・機能・能力を持つ技術、又はオブジェクト。

・魔法と科学の融合にならない範囲でのみ開発を行う事。

・時間・空間技術研究を禁止し、時空間固定技術への妨げにならない範囲(重力・慣性制御まで等)でのみ開発を行う事。

・TLO・魔法・時間・空間を制御出来うる技術、及び、下記検証方法等により危険に成り得る兆候があった場合は、即刻その方面の技術開発を中止・凍結を行う事。

#テックレベルオーバー(TLO:Technology level over)拡散防止法

http://www.zekuu.com/field/event/tlo/tcm_top.html

 

●TLO防止の為の検証方法

 TLOがゲート解放能力であるなら、ゲートの解放状態を確認する事で、TLOに近づいているかどうかの検証が可能となる。

 セントラルが開いている場合、空の星の見え方が変わったり、植物が成長しやすくなることが分かっている。これらの状況が起きているかを観察する。

#TLOに関する星見クエスト

http://cwtg.jp/qabbs/bbs2.cgi?action=article&id=9348

 

●研究内容の悪用と、漏洩による乱用を防ぐ体制

・藩国内に、学問の悪用を行った者に対しては独自の条例にて処断する権限を持つ藩国施設群(学園都市)を建築。その内部にて研究活動を行う。

・研究育成に関しては、哲学や道徳教育と並行して行い、研究者自身の精神的成長・自己昇華に基づいて技術発展を目指す。

・魔法との融合などのTLO、人道的に問題のある研究に関しては、厳しく戒め、違反者に関しては逮捕・禁固刑が適応される。

・研究者の倫理的・人道的な成長を第一の目的とするため、研究内容は藩国首脳や有識者で構成された評議会に定期報告が求められ、新しく発見された定理・原理・法則・物質などは、その対抗手段が発見されない限り、原則非公開とする。

 

 そのため、研究者は自ら発案した物に責任を持たなくてはならない。

 職務上知り得た情報の秘匿義務と(その技術や物質、法則などに対抗手段がある場合に限り)公開義務が存在する。

 

 ちなみに『藩国研究教育機構』に所属しない個人レベルの研究者も極少数存在しない事も無いが、支援は最小限になるワリに報告義務がそのまま残る為あまり意味は無い。

(もちろん、援助を受けながら報告を故意に怠ったり、逃亡の恐れがある場合は禁固刑を含めた重罰則があり得る)

 

(なお、藩国黎明期(#シーズン1)の頃から「制御出来ない技術に理念は無いですよね。TLOとか胡散臭いし」などと某摂政とか某文族長とかが色々のたまっていたとかその発言に影響はあるのかどうかは定かではない)

 
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 今後は藩国施設群として、青少年の教育と研究機関をかねる学園都市の設立が予定されている。

 輸送の民として、高度な医療設備を搭載した移動病院ヘリコプターや、宇宙エレベータ(天空のケーブルカー)の開発、大型ハドロン衝突型加速器(LHC:Large Hadron Collider)の建設による素粒子研究なども計画されており、教育を通して発展が期待されていた。

 

 その理念は、商業国家のノウハウからソーシャル・ビジネスモデルを研究機関として発展応用させた物といえる。

 

 ソーシャル・ビジネス(SB)とは

・会社として社会に貢献する目的を持つ。

・ソーシャル・ビジネスは損失も配当もない。

・投資家は特定の社会問題の取り組みに投資する。

 

 なぜならば、それは『投資家の利益は株主配当ではなく、社会問題の取り組み、社会貢献への投資に対する満足度』だからである。

■5:世界爆破のイノベーション

「……流石に緊張するな」

「あらあら、世界爆破のマァッドサイエンティィィストッッさんは、発表会ごときにチキンですねー……時間よ」

「ロート、いままで長い間一緒にいてくれて、本当に感謝している……それでは出撃する!」

「うん、頑張れ。私のマッドサイエンティスト」

(58:いわゆる完成形)

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「本日は、私の研究に際し発表の機会を与えて頂き、誠に感謝致します。これより、『総合医療・診断補助MR(複合現実)システム』の説明に入らせて頂きます」

 

 【慈悲深い】瞳を【片眼鏡】の奥に隠した初老の科学者による解説が始まった。だが、その優しい熱弁はもはや【老人】の物ではない。

 既に、【意外にでかい】円卓型の医療機器は、【ツナギ・手袋・帽子】といった【整備の神様】の様な姿のスタッフや【猫】士たちによって【クレーン】で壇上に上げられていた。

 白衣を【マント】の様に翻して演説する老科学者に合わせて、【部下】と思しき【美人秘書】がオブジェクターに資料を映像出力させて補佐している。

 

「本システムを簡単に説明すれば『医療分野における診断・手術支援に向けた情報提示など』の研究応用に当たります」

「まず最初に、拡張現実(AR:Augmented Reality)のご説明をします。これは仮想現実(VR:Virtual Reality)と対を成す概念で、現実の環境の一部に付加情報としてバーチャルな物体を電子情報として合成提示することを特徴とします」

 

 患者の身体や病状が3Dホログラムとして解説されると共に、外科・内科手術の術式補佐のみならず、インフォームド・コンセント(医療説明同意。IC:informed consent)兼用の電子カルテとしても活用される事が示される。

 手術用手袋を模した専用のモジュレータを介して3Dホログラムを触れば、実際にホログラムも触れているかの様に形を変えると共に、手袋にも対応した過負荷が手に掛かっており、まるで映像を手で触っている現実の様な感触を得られていた。

 蓮田屋と四条は思わず顔を見合わせる。これはいつかSF小説で見た『緊急医療ホログラム(EMH:Emergency Medical Hologram)』による総合診療ではないか!

 

「合成提示される電子情報(アノテーション)は現実環境中の特定の物体に関する説明や関連情報を含み、説明対象となる実物体近くに提示される事があります」

「このため、提示される環境の主体が現実環境である事から、現実環境における作業支援がその応用分野として期待されていました」

 つまり『総合医療・診断補助MR(複合現実)システム』とは、

・医療データベースの構築と診療ネットワークの設立

・3DホログラムAR(拡張現実)干渉技術

・モーショントレースによる高度技術保護

・脳科学データの蓄積による医療AI構築 といった、既に運用されている医学・脳科学・機械工学といった異分野技術のコラボレーションであった。

 

 それは、ただの努力で結集された、概念と発想のイノベーション。既存の技術という【世界の終わり】

 

「私は、複合現実(MA:Mixed Reality)という概念を提唱します」

「複合現実(MA:Mixed Reality)とは、拡張現実(AR:Augmented Reality)と仮想現実(VR:Virtual Reality)を包含し、現実空間と仮想空間を混合し、現実のモノと仮想的なモノがリアルタイムで影響しあう新たな空間を構築する技術全般を指します」

 

 イノベーション(innovation)とは、物事の『新機軸・切り口・捉え方・活用法(を創造する行為)』の事である。

 それは、新しい技術の発明だけではなく、新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革である。

 

「良き仮想を現実に、悪しき現実を仮想となす。それが私の【マッドサイエンティスト】としての夢です」

 

 ――故に【善なるマッダー】のイノベーションは【世界爆破】と証される――。

■6:前途洋々のプロローグ

 ――技術に掛ける想いに聞き入る会場に、締めの言葉が綴られる。

(58:いわゆる理想色)

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「最後に、私はこの『総合医療・診断補助MR(複合現実)システム』を『ロート(Rot)』と名付けました。ロートとは古語で『赤色』を意味し、生命を保つ血の色でもありま――」

 

 ――どんがらがっしゃん。

 なにやらズッコケる音に、イイハナシダナーと感動に包まれていた会場の空気が、突如コメディ色に反転する。

 おそらくは壇上の老科学者と同年輩、老いても尚美しい女性が、怒気と羞恥で真っ赤に染まった顔で立ち上がった。

 

「き、聞いて無いぞ! その『名前』!!」

「どうした、ひぃー↑ しょー↓ よぉー↑ 俺のネーミングセンスに、何か言いたい事でもあるのかぁー?」

「うるさいバカ、勝手に『システムの名前』に『人の名前』付けて! あと秘書って言うなぁ!」

「フゥーハハハハハ! 我が愛する『妻の名前』を世界に表明して、何が悪いというのだーぁ?」

「許さない、絶対許さないからな、この厨二病!! 58歳にもなって自重しろ!!」

 

 響く歓声。吹き飛ぶ機材。アフロ【っぽいなにか】になる頭髪。

 思わぬ熟年バカップルのツンデレ夫婦喧嘩に、はしゃぎ出す参加者。

 女性陣が黄色い悲鳴と声援を上げれば、男性陣が爆笑しながらはやし立てる。猫が踊る。

 小銭を賭け始めるバカがいると思えば、胴元はドクター無畏だったりする。

 どいつもこいつも気持ちの良いマッドなお調子者ばかりだった。

 

「よーし、リア充の【世界爆破】しろ?」

「おおっと、この摂政止める気無いぞー? せっかく布石が生きてるんですから自重しろ、マジで」

 

(テキスト:蓮田屋藤乃・四方無畏・四条あや)

 
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■備考データ

●スタッフリスト

(テキスト:蓮田屋藤乃・四方無畏・四条あや。イラスト:ぱんくす)

●職業組み合わせリスト

輸送の民+整備の神様+マッドサイエンティスト+善なるマッダー

らげん猫+整備の神様+マッドサイエンティスト+善なるマッダー

●要点・周辺環境リスト

 t:名称 = 輸送の民(人)

 t:要点 = 輸送,だけ,開き直り

 t:周辺環境 = この世の終わり

 

 t:名称 = らげん猫(種族)

 t:要点 = 猫,っぽいなにか,意外にでかい

 t:周辺環境 = 世界の終わり

 

 t:名称 = 整備の神様(職業)

 t:要点 = 帽子,部下,ツナギ,手袋

 t:周辺環境 = クレーン

 

 t:名称 = マッドサイエンティスト(職業)

 t:要点 = マント,片眼鏡

 t:周辺環境 = 美人秘書

 

 t:名称 = 善なるマッダー(職業)

 t:要点 = 世界爆破,慈悲深い,老人

 t:周辺環境 = 羅幻

 
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Last-modified: 2017-06-19 (月) 21:10:15 (519d)