L:マッドサイエンティスト = {
t:名称 = マッドサイエンティスト(職業)
t:要点 = マント,片眼鏡
t:周辺環境 = 美人秘書
t:評価 = 体格1,筋力−1,耐久力0,外見1,敏捷−1,器用8,感覚1,知識4,幸運−1
t:特殊 = {
*マッドサイエンティストの職業カテゴリ = 派生職業アイドレスとして扱う。
*マッドサイエンティストは整備行為ができ、この時、整備判定((器用+知識)÷2)を評価+4補正することを選択出来る。補正を選択した場合燃料1万tを消費する。
*マッドサイエンティストは美人秘書を指定でき、相手の職業4をサイボーグと出来る。指定が続くまでこの効果は続く。
*マッドサイエンティストは破壊された全ての乗り物を整備判定((器用+知識)÷2)の成功で修復出来る。通常の整備から難易評価+4すること
*マッドサイエンティストが整備した機体は最初の幸運判定時、幸運評価+3される。
}
t:→次のアイドレス = アンドロイド製作者(職業),善なるマッダー(職業),世界破滅協会(職業)
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ヒトは、生まれてくる時にかみさまから一つの宝石を授けられる。
その宝石は個々人に拠って異なり、同じものは決して存在しないという。またその形も、大きさも、性質もそれぞれで、滑稽なのは、渡されたその宝石は原石でしかなく、それを磨くのはあくまで当人、それも磨き方や研磨に適した時期でさえもが不明ということであろう。多くの宝石は原石のままそれを授けられた本人と共に現世を去るし、磨き方を間違えたり磨くべき時を逸したりしてしまい、歪な――そして多くの場合ごく僅かな――輝きしか得られない。
しかし、いいや、だからこそ、その<宝石>は類まれなる人生なのだろう。多くの場合に言い表される財――形而上的、非形而上的なあらゆる意味での運用可能な資源(リソース)が、前提として後天的なものであるのに対し、その<宝石>は、紛うことなく先天的に持ちえるものだからだ。
故に、それを<贈り物>(ギフト)と呼ぶ。ヒトがこの世に生を受けるにあたり、無作為に無差別に無慈悲に送りつけられる宝物。そこに選択権は存在せず、また、受け取りを拒否する権利もあり得ない。
――故に。
それを、職業と称すのは、あまりに歪であるだろう。
天才と呼ばれる者が居る。凡百の中で切磋琢磨し抜きん出た秀才ではなく、生まれながらに、まるで斯く在るが道理であり摂理であり運命であり当然であり義務であると言わんばかりに絶対的な、そして隔絶的な才能(センス)を備えた者。到達した、いいや、超越した者。即ち、<生まれ持った者>(ギフテッド)。
そんな彼ら、彼女らは、多くの場合、孤立する。
彼ら、彼女らはその才能ゆえに凡人を理解できず、また、勢力と言う面で言うのなら、間違いなく少数派(マイノリティ)なのは彼ら、彼女らの方であるが為。孤立した天才は時間と共によりいっそう孤独を深め、いずれは花を手向ける者さえ居ない土の下に眠ることだろう。
その結末、優れているが故に異端であり、異端であるが故にこそ訪れる終幕を、惜しい、と思った者が居た。
結局のところ、彼ら彼女らは異質ではあるが優秀であり、超越しているからこそ特異なのだ。凡人が百年二百年の時間と世代を重ねて至る理論を一杯のコーヒーから導き出し、チェスの手を編むように新たな概念を提唱する。寝物語に異物たる死者の書を解読し、今世の命題と提唱された数式を暇つぶしに証明するような輩。それを異質を理由に追放するのは、あまりに不合理ではないか。
その思想は時間と共にゆっくりと、けれど確実に、まるで砂を犯す海水のように浸透し――いつの間にか、一般化していた。
それらは、そう、俗に<超越者>、<境界を超えた者>、<理解不能者>――即ち、<理性狂い>(マッドサイエンティスト)と呼ばれる。その認定は執務院が抱える専門機関によって行われ、そうであると――規格外だと認められた者は、無条件で、そして強制的に、その資格とある種の公服――自分はマッドサイエンティストですと周囲に知らしめる為の制服が与えられる。それが即ち、王家の紋章と執務院の紋章が撒かれた【マント】であり、純金製のフレームを用いた【片眼鏡】(モノクル)である。
またマッドサイエンティストと認められた者には、執務院直属の個人秘書があてがわれる。これはそのままでは一般社会から隔絶せざるを得ない彼ら、彼女らを一般社会の内部に留め、その才能をより効率的・効果的に運用させるための調整役である。その人選は執務院が行うが、その役目柄、マッドサイエンティストの秘書官に任命されるのは有能な女性である場合が多い。
これは、マッドサイエンティストと周囲との折衝を行うという意味で相手の警戒心を解きやすい女性が適任であるとされるのと同時に、緊急時における身軽さ、精神的な強さを考慮した結果であると言われている。
というのも、多くの場合、ごく一般に言われるところの共通認識(コモンセンス)を超越した彼ら彼女らの行いは、善悪というもので推し量れない場合が多い。そして、超越している彼ら彼女らだからこそ、その(多くの場合)悪意の無い悪行は、周囲に多大な被害を生む。とあるマッドサイエンティストが趣味で作った土壌改善薬が1halに渡っての土地を汚染し、ごく限られた植物しか繁殖を許さない土地になったという記録は、そのささやかな一例であるだろう。
そのため、彼ら彼女らにあてがわれる秘書――多くの場合、有能な【美人秘書】は、緊急時における物理的な阻止権限を有している。それは拘束、軟禁、監禁の権利であり、限定条件下では殺害権すらも認められている。それほどまでに強固な抑止力が必要なのだと、認められているのだ。
特異な【マント】と金縁の【片眼鏡】を身に着け、半歩後ろに【美人秘書】を控えさせるその姿。
それは、真実、言葉の通り、羅幻王国国民の畏怖を一心に受ける存在なのである。
あまり知られていないことだが、マッドサイエンティストに仕える美人秘書にも数人の【部下】が居る。彼らは全員【帽子】を目深にかぶり、【ツナギ】に【手袋】という、極々整備士らしい格好をしている。
彼らの役目はマッドサイエンティストに【クレーン】などの、マッドサイエンティスト以外の整備士等が触れる可能性のある全ての機械を操作し、マッドサイエンティストに触らせないことである。
何故ならマッドサイエンティスト達は、あくまでも善意で触れた機器を使いやすいように改造してしまう。そうすると、一般の整備士が使った時に思わぬ事故が起きてしまう。
こうした事故を起こさない為に、彼らは決して目立たないながらも重要な職務を日夜こなしているのである。
(イラスト:グレイ・ぱんくす。テキスト:四条あや)