羅幻王国は工業力に秀でた技術大国である。
そのため、そのエネルギー事情は近隣の国々と比較しても真摯な対策を採らざるを得ず、結果的に国家レベルでエネルギー効率に優れているのが現状である。
羅幻王国の官民が必要とするエネルギーを賄う施設として代表的なものは、広大な砂漠地方に点在する地熱発電施設や同じく砂漠に連なる風力発電施設などがある。
前者は砂漠特有の日中の日差しによって(天候によっては素手で触れられぬ程に)熱された砂の熱を使い、沸点の低い液体を蒸発・滞留させることでタービンを廻し電力を得るという、古典的ながらも信頼性の高い手法が取られている。
後者、風力発電施設に関しては、どちらかと言うと都市部での消費を賄うための発電施設というより、末端での消費を補うための施設と言った面が強い。
砂漠地帯には食糧生産プラントが点在するが、風力発電施設はそれらネストのすぐ傍に設置される場合が多いのである。
これは、砂漠という過酷な自然条件の中に送電用のケーブルを設置するよりも、消費場所のすぐ傍で必要な分の電力を生産してしまえば、逆にコストや稼働率の面で見て効率的なのではないか、という提案がなされたためである。
実際、そのような末端配置型の風力発電施設が設置されるようになって以来、羅幻王国内に存在するネストの稼働率は緩やかに上昇し、それ以前よりもしっかりした食糧生産が可能になっているというデータがある。
沿岸国である羅幻王国にとって、風力というのは何よりも簡単に手に入る燃料源である。
港としても漁場としても活用できない入り組んだ海岸や浅瀬であっても、風力発電の施設そのものを作るのは比較的容易であり、実際に数多くの風力発電機が設置されている。
それらは先述した末端使用エネルギーを賄うためのものではなく、純粋に羅幻王国全体の消費エネルギーを賄うために用いられている。
発電機一基あたりの発電量は決して多くなく、また風況により発電効率が著しく上下しやすいという欠点を抱えてはいるがそれを補ってあまるほどの魅力がある。
何せ一度稼動を始めれば、あとは特に管理をせずとも(風況次第ではあるが)基本的に二十四時間休まずに稼動を続けるし、整備といった手間(殊更燃料発電施設のそれと比較すると)少ない。
風力発電施設は大規模なものでは砂漠地帯に七基連なったもの、(通称"セブン・タワーズ)から、一般家庭で気軽に設置・運用が出来る小型なものまで、大小の差こそあれ羅幻王国全体に万遍なく設置されている。
そのため実質的な流通数も多く、結果的に高い技術力をつぎ込まれた機種も多い。