砂漠と海の国である羅幻王国では、有り余るほどの日光がその国土を広く照らしている。
容赦なく照らしつけるその日光は、それ故に灼熱の焦土の如き砂漠を国土の北方に現出させる一方で十分に水が蓄えられ潤った地域には、大いなる恵みをもたらすものであった。
倉庫街などの都市部郊外や、砂漠地帯を横断する交易路沿いに作られた、巨大なソーラーパネル群は、砂漠における数少ない有効な資源の一つである、太陽光を存分に活用する目的で建造された。
これら巨大なソーラーパネルを砂漠地帯に設置することには、2つの意図がある。
一つは、純粋にエネルギーを確保する目的である。
日々照りつける太陽光は、ソーラーパネルによる発電により、莫大な量の電力を安定的に発生し、都市部や近隣のオアシス、そして延々と砂漠を貫く交易路に安定した供給を行っている。
また、日光が当たる側と日陰となる側の温度差をも利用した、二重の発電が試みられている。
二つめは、日陰の確保である。
一部交易路沿いや倉庫街では巨大なソーラーパネルは同時に巨大な遮光装置として機能する。
つまり、差し込むような強い日光に抵抗するかのように立ちはだかる巨大なソーラーパネルは交易路上や倉庫街への直射日光を遮断し、交易路を行き交う人々に安らぎとなる日陰を提供すると共に、倉庫街一帯の気温・地熱を下げる効果により、倉庫街の冷蔵冷凍施設への負荷を下げ、物資の保存性を向上させる役割を担っている。
空路や海路に劣らず陸路を重要な交易手段とする羅幻王国にとって地味だが確実な恩恵をもたらしている。