コンクリート構造物を作成するに当たり、一般的には骨組みに強度を上げるのも兼ねて鉄筋が使用されている。しかし、塩害によってコンクリート内に浸入した塩分が、その鉄筋を錆び付かせて強度の著しい低下を招いているのが現状である。
前述した『ソルティ・キャット』を使用することによって塩分の内部への浸入をほぼカットしてはいるものの、物理的に表面に傷やひびが入り、そこから浸入することがあるので完全にはカットできない。
しかし羅幻王国は膨大な実験の末に鉄筋の代用品を開発した。海洋国である羅幻王国の別の一面、それは砂漠の国であること。その代用品には、国内に無尽蔵にある砂が使われているのだ。
砂漠から採取された砂はふるいにかけられ、コンマ5ミリ以下のものが使用される。そこに、新たに開発された特殊な薬品が加えられるのだが、その薬品は砂漠に生息しているスーナーニワトリから摘出した体液が主成分なのである。
スーナーニワトリはその表皮の堅さに定評があるが、実は表皮が堅いだけではない。身体から分泌される体液と砂が化学反応を起こし、表皮の表面に高硬度の膜を作り上げているのである。
羅幻王国の技術陣はこれに着目したのである。
砂と薬品の混合物を高温で焼き上げることにより表面が非常に硬くなる。ただ硬いだけでは脆くなるだけなのだが、その主成分であるスーナーニワトリの体液は熱を加えると表面を硬化しながらも内部は粘度を保ってくれるのである。
これらによって、セラミック並の強度と鉄のしなやかさを併せ持ち、尚かつローコストな夢の材料、『サンドスティール』が完成するのである。
『ソルティ・キャット』と『サンドスティール』。
この二つを併用することにより、塩分の浸入があっても錆び付かず、強度を保つ事が可能となったのである。
この二つの材料はもっぱら対塩害として開発されたものの、耐熱処理や耐油処理を施すことで様々な用途にも応用が利く。これによって『過酷な環境下における建造物の劣化防止対策』が達成されのであった。