砂と海の民〜カオスパンキッシュ






 物の交易とともに、人の交流が促されるのは、世の必然である。
 すなわち、羅幻王国においては、その活発な交易活動を通じて、さまざまな土地のさまざまな人種の往来が行われある者はまた去り、ある者はこの地に住み着き、溶け込んでいった。
 陸路においては、王国を横断する交易路がその舞台の中心となった。時には、交易路を行き来するキャラバンを相手に商機を見出し、時には、砂嵐の中、命からがら逃げ延びたオアシスを安住の地とした。
 ある者は、街中を流れる水路の織り成す街並みに心躍らせ、またある者は王国の地下にある広大な世界……数多の遺跡や洞窟群に魅入られ、その安住の居をこの地に定めた。

砂と海の民〜カオスパンキッシュ

   交易路が王国の北の玄関口ならば、南の玄関口は海である。広範な港と、その両岸を守るように設置された駐屯基地は、王国の海上の交通を支える重要な基盤となっている。
 そして、王国には、陸と海の双方に通じて莫大な資源が眠っている。

 ――燃える水、石油である。

 先の王城爆破作戦により王城跡地から発見された油田は、共和国内における羅幻王国の燃料生産地としての地位は確固たるものとなった。
 石油(と、それに伴う天然ガスなど)は燃料、そして工業製品の原材料としてもその価値は高い。
 プラスチックなどの素材、農薬・化学肥料・食品添加物といった薬品、医薬品、合成繊維、塗料、合成ゴム……このような、石油化学の関連産業の発展は、元から活発であった王国の人材交流を、更に推し進めるものとなっている。
 羅幻王国の国民が『砂と海の民』と呼ばれるゆえんは、ここにある。
 北に砂漠を突き抜ける交易路、南に広大な海を臨む港を備え、それぞれの交通の交差する場所こそが、現在の羅幻王国の首都である。
 陸と海、砂と水、人と人の交わるその様はまさしく、羅幻王国国是であるところの『カオス・パンキッシュ・闇鍋』を体現しているのである。

キャスター神凪の声による説明