王立図書館4F
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*王立図書館4F [#v3af70c0]
イベントなどで提出するSS等の文章類を掲示しております。
#contents
**羅幻雅貴作『無能女王即位 ~あるいは、無能王女の策略~』 [...
ふやりふやりと酒を呑む。周囲に転がっている酒瓶は一人で...
#BR
「王女様、それ以上はもうやめたほうが……」
「あによぉ〜、呑んだって良いじゃない」
#BR
ルクスが酒を取り上げようとしたので、手元にあったレバー...
#BR
「で〜〜〜〜ん〜〜〜〜かあああああぁぁぁぁぁぁ」
#BR
そのまま、突然開いた落とし穴に落ちていく……行き先はこの位...
……まあ、地下牢かもしれないけど、そんなこと今は知ったこ...
#BR
「……父上、死んじゃった……って、嘘でしょ」
#BR
父上――羅幻王国国王が死んだ。私にはいまだに実感が沸かな...
父上は王という仕事の上に、技術者としても腕が良かった。...
#BR
「……ばかやろー」
#BR
王女にはあるまじき言葉だろうが、大声で叫ばないだけマシ...
#BR
「父上のばかーーー!! アホーーー!! 無責任ーーー!! 死ぬ...
#BR
ほぼ理不尽で占められている叫びを放ち、また酒を呑む……ま...
#BR
「……『おうさま』かー……自信無いなあ」
#BR
深くため息を吐き出し、天井を見上げる。
#BR
『羅幻王国の国王』
#BR
羅幻王国の頂点にして、最高権力者であり、そして一番の責...
そんな椅子に座るのだ。しかも、国内の古狸や、各国藩王と...
そこまでやれる自信は……無い。
#BR
「あ、そっか、じゃあ」
#BR
ふらりふらりと揺れつつ父上の部屋へ入って鍵を締めると、...
そうやって引っ張り出したデータを父上のベッドで寝転びな...
#BR
「……蓮田屋……あー、時々名前聴く人だー」
#BR
砂漠を歩いていれば、時折聞く名前だ。どうやら父上、しっ...
#BR
「よし、この人ヘッドハンティング! で、次がルクスさんに...
#BR
ぺらりぺらりと人材表をめくっていけば、優秀な人材がどん...
#BR
「よっし、ウチにも優秀な人材いるわね。じゃあ無能な上役は...
#BR
どこか邪悪を思わせるような笑みを零しながら、真っ黒い手...
その手帳には『おうさまの閻魔帳』とこっそり書かれていた...
#BR
============================...
#BR
さて、それから一週間後の、海の上。レジャー用の小舟の上...
#BR
『愁壬王急死。 王女、喪中につきコメントを差し控えるとの...
『王宮爆発トトカルチョ開催中。締切は毎月5日朝10時まで電...
『チーズケーキグランプリ開催。ベイクドとレアチーズ、どち...
#BR
「……『王の急死』、か」
「ええ、そういうコトにまとめたわ。で? どうするの? こ...
「私が『暗愚』なのは知ってるでしょ? 国家を立て直す良い...
#BR
顔を歪ませ、嗤う。そう、その為の準備は整いつつある。人...
#BR
「まあ、有能な人材は居るけど、押さえ込まれてた分不満もた...
「『勝手なコトするな』ってネ?」
「そゆコトね。で、この方式だとウチは破綻するわ。だって、...
#BR
一向に釣れる気配のない釣り糸を見ながら、ただ事実を言っ...
今の状況では『ただそれだけ』で終わりそうな予感もするが...
#BR
「これから全部を判ろうとするには、時間が無さ過ぎるわ。わ...
「有能な王様になるのは、それからでも遅くないってこと?」
「そ。つまり、私自身の時間稼ぎも含めて、今やらなきゃいけ...
「きっぱりはっきり言うネ、まったく」
「王様ってのは、そういうモノなんでしょ?」
「まったく、その通りだけど……面白くなりそうね」
#BR
私がにやりと笑ってみれば、かちゅーしゃ前摂政も笑う……今...
話が少し切れたので、釣り糸を戻して仕掛けを施し海に投げ...
#BR
「……ねえ」
「ん? なに、かっちゃん」
「それだけでも、アナタ随分有能なおうさまになると思うのだ...
「当然。だって、実際私は無能だもの。計算シートの一つくら...
#BR
ふう、とため息をついて横に置いておいた計算シートをバッ...
父上なら完璧にこなせるだろうことが全然できない事は、こ...
#BR
「……ルクスさんをまず宰相に置くわ。そして外部から『蓮田屋...
「ああ、あの。時々噂を聞くくらいだけど……」
「即位式が終わった後、すぐに私自身が彼女と交渉してみる。...
「忙しくなるネ、随分と」
「かっちゃんにも協力してもらうわよ? 有能で、腹心の人な...
「えー、私仕事したくないー。ギャグしてたいー」
「そー言わない。私だって本当は外行って遊びたいんだもの。...
「さ、最後が不穏……」
#BR
そう、やりたいことを国家の運営とかに差し障りのないよう...
#BR
「ま、ね? 王様が抜けたくらいで壊れるような国家なんて脆...
「まあ、それは言えてるわね、お・う・さ・ま?」
「あら、まだ私王様じゃないわよ? 事実上そうであってもま...
「まあったく、お腹まっくろだわねぇ」
「……かっちゃん、糸引いてる」
「おおっと! 今夜の晩ご飯!!」
#BR
ぴん、ぴんと釣り糸が引いていたのを、かちゅーしゃが慌て...
#BR
「おおー、処置までお見事〜」
「まあねー。そっちは釣れたの?」
「これから釣るわよ。『人材』という大きな獲物をね。お魚……...
「まあ、しょうがないわね。で、これがバレて暗殺とか来たら...
「一つの国家といえど、藩領である以上、王がいなければ当代...
「……内乱にもなりかねない、という事ね?」
「そうなったら私は本気でコトを起こすわよ。国民を路頭に迷...
#BR
ふふ、と小さく笑って糸を見れば、こちらも引いている。リ...
#BR
「ま、ね? 私が『暗愚』と信じて色々情報漏らしたりしてく...
「随分情報漏洩が甘くなってる部分あるから、それも狙うのも...
「起こってしまった事より、対処が必要よ。私が今一番欲しい...
「大鉈……ね、随分とまあ、この国も腐ったものね」
「仕方無いわよ。古い国には良くある事だわ」
「……大鉈の振るい方くらいは知っているわね? おーじょさま...
「勿論。大鉈の振り方は、お手本が山程あるし、見て来たもの...
「そうねえ、私のLOVE&PEACEにも一匹釣らないと。がんばらな...
#BR
にっこり笑い合うと魚の群れを見つけようとソナーを起動さ...
さあ、これからどうなるか、恐れと期待で胸をどきどきさせ...
#BR
#BR
============================...
#BR
3ヶ月後。
新王即位の儀式後、皆を集めてにこにこ笑いながら、私はそ...
#BR
「新王即位、おめでとうございます。して、王様、何故我々を...
「うふふ、ありがとー。うん、新しい王様になったから、新体...
#BR
ざわつく臣下達を前にあくまでもいけしゃあしゃあと言い放...
#BR
「それでね」
#BR
指を鳴らせば、現れるのは我が国が誇る軍の精鋭達。それに...
その中で総ての事情を知っているかちゅーしゃ前摂政は、に...
#BR
「調べてみたら、面白い話が上がって来ててね〜。ナニコレ?...
#BR
うふふ、とあくまでも可愛らしく笑いながら、次々と流れて...
父様の目に狂いは無かったし、間違ってもいなかった。これ...
うん、やっぱり私は無能だ。
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「羅幻王国藩王、羅幻雅貴の名において命じます。そこの犯罪...
「お、王よ!! お聞き下さい!! 我々は国のためを思って……!!」
「国民を裏切り、先王の信頼をも裏切ったその罪は深いわ……一...
#BR
あくまでも笑顔を崩さずに言い放つと、家臣達が歩兵に引き...
#BR
「さあって、邪魔者は消えたわ。んで、ここに残った、あなた...
「……つ、つまり、これをしたかったから私達を呼んだと?」
「そーよ、ルクスさん。貴方は宰相になってもらうねー。かっ...
「え? ……え、え、え、え、え、えええええ!?」
「えー! 私仕事したく無いって言ったじゃないの〜。ギャグ...
#BR
奇声を上げて自分を指差して固まるルクスとぶーたれるかち...
それにはたと気付いて、「ああ」と声を出したルクス――どう...
#BR
「お、王様っ、どこに行くのですか!?」
「蓮田屋藤乃さんを、正式にヘッドハンティングに行くのよ。...
#BR
そう言って、私は外へと駆け出した。前途多難だけど、この...
#BR
さあ、戦いをはじめよう。無能でも愚劣でも、それでも私は...
#br
#br
**グレイ様作『戦い終わって夜も更けて 〜戦勝祝賀会〜』 [#...
ここは羅幻城地下にある統括通信センター。 国内の情報や...
その中央管制室の中を、かなり場違いな愛らしい少女がひっ...
#br
さて、彼女が何故うろうろしているのかというと、早朝に出...
#br
「う〜、まだかにゃ……まだなのかにゃ」
#br
尤も、愛らしい外見に加えてその可愛らしい呟き声のせいで...
すると、管制室の自動ドアが開き、二つの人影が入ってくる。
#br
「……陛下、ちょう落ち着こうや。そんなんしたってあいつら帰...
#br
一人は針千本。魂の故郷が東京なのに大阪弁を駆使する謎の...
#br
「そうだ、陛下。後学の為にも今からどっしり落ち着く事を身...
#br
表情一つ変えずにそう告げるのは凄爆嵐、羅幻王国の総料理...
#br
「そら、サンドイッチを作ってきた。ウバの紅茶も用意したか...
#br
微かに、ほんの微かに唇を上方へ歪ませて、持っていたトレ...
#br
「……食欲ないにゃ」
「こーら、そんなことゆうとったら、俺が喰うてまうど」
「しかし、昨日から何も食しておらんだろう。あいつらを迎え...
「むぅ」
#br
口をとがらせる羅幻。その様子をやれやれと肩を竦めながら...
すると、その時。
#br
「陛下! 軍師殿から入電です!!」
#br
オペレータの一人がプリントアウトされた紙を手に立ち上が...
#br
「早く、早く読むにゃ! なんと言っておる?」
「ちょ、陛下っ」
「陛下餅付け。揺らしたら読めるもんも読まれへんで?」
#br
オペレータにしがみついてぐらぐら揺する様に苦笑を浮かべ...
#br
「わ、わかった。わかったから降ろせ〜」
「ジャ、ジャミングが激しいので、短文だけ送られてきました...
#br
その瞬間、管制室は歓喜で爆発した。
あちらこちらで歓声があがり、走り回る者、抱き合う者、踊...
#br
「いよっしゃああああああああああ!! やりおった、あいつら...
#br
天に拳を突き出しながら叫ぶ針千本もその一人であった。一...
#br
「よかったにゃ……よかったにゃ……」
#br
嵐の胸で泣いていた。その大きな瞳から、安堵と喜びが涙の...
#br
#br
国家再建後の初戦。羅幻王国軍は一人の死者を出すことなく...
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#br
#br
『戦い終わって夜も更けて 〜戦勝祝賀会〜』
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#br
#br
「てなわけで、改めて、身内での祝勝会の始まりやっ!」
#br
国王執務室は見るも無惨な状況に様変わりしていた……つまり...
#br
「まずは、吶喊でこの美味そうな料理を大量に作ってくれた、...
#br
その言葉を受けて響く割れんばかりの拍手……しかし嵐は全く...
#br
「次に、場所と軍資金を提供してくれた、我らが国王陛下に拍...
「任せなさい! こんな時の為ならへそくりの一つや二つ!」
#br
再び拍手が巻き起こる……嵐とは正反対な対応を見せる羅幻で...
#br
「そして、最後に……」
#br
その台詞を受けて、当たりはシンと静まる。なかなか心得た...
#br
「修羅場を無事乗り越えて生還した、12人に拍手や!!」
#br
残念ながら、その12人以外には6人しかいないので先程まで...
#br
「では乾杯の音頭を……ここはルクス宰相閣下にお願いするわ!」
「うぇ!?」
#br
いきなり話を振られて、みんなの様子をにこにこと見守って...
#br
「あー、で、では僭越ながら」
#br
顔を赤くしながら、こほん、と咳をつきながら立ち上がるル...
#br
「えー、まずはこの……」
「長い!!」
「ちょっ」
#br
出だしからいきなり入った突っ込みに慌てるルクスである。...
#br
「ま、いいや。固いことは抜きにして、乾杯!!」
『かんぱ〜い!!』
#br
至る所から響く、グラスの交わる音。公務を全て終らせて集...
#br
#br
§ § ...
#br
#br
それではまず、このちゃぶ台から見てみよう。
#br
「にゃははははは」
「ご機嫌だな、陛下」
#br
そこには今回パイロットを務めた三名、ぱんくす卿、シノブ...
ぱんくすの背中におんぶする羅幻……私服なのか、カジュアル...
#br
「そりゃそうにゃのにゃ〜」
「ちょ……いいんですか? たしか陛下って」
「……未成年の人が真似しないようにしないとな?」
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呆れるシノブに寛は苦笑混じりに呟く……全く、王国のトップ...
#br
「ぱんさんには世話になりっぱなしだにゃあ。こにょ前にょ偵...
「何を言う。活躍の機会を与えてくれて感謝している」
「むふ〜、そう言ってくれると嬉しいにゃ〜」
#br
やや苦笑混じりのぱんくすに頬ずりする羅幻。ぱんくすの方...
#br
「こうやって見ると親子みたいですねえ」
「ちょう、シノブ。せめて兄妹と言うたりいな」
「あ、中隊長」
#br
シノブが生暖かい眼差しでそう呟くと、ジョッキを片手に針...
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「それから、勤務期間中はその中隊長ってやめえな。むず痒い...
「あ、すみません」
「針千本、今回は悪かったな。出来れば変わってやりたかった...
「何言うとるんよ、あの作戦やったら寛の方が適任や。ま、ち...
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そう言ってジョッキを傾け、一気に飲み干す針千本。見た目...
#br
「しかし陛下、ご機嫌やな〜。ぱんくす、チャンスや、なんか...
「ふふ、そうだな。折角のこういう機会なんだ、少し恩を着せ...
#br
そして苦笑から良い笑顔に表情をシフトチェンジするぱんく...
#br
「にゃ?」
「おい、ぱんくす。酔ってる時に言っても仕方なかろう」
「え、なんなんですか?」
「いや、陛下はいっつもあんなもんやろ?」
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シノブには分からなかったが、出発前にぱんくすとした会話...
#br
「シノブはまだちょいと早い、かな。陛下……」
「にゅ?」
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ぱんくすの背中で目を丸くする羅幻。何故か尻尾まで丸まっ...
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「……俺と寛……後、針千本に、イエロージャンパーを着る許可を...
「うお……そう来たか」
「にょ!?」
「……いや、しゃべりましょうよ陛下」
「駄目だな、これは……」
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#br
§ § ...
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「ふむ。しかし、むぐ、初陣とは思えぬ、むぐ、見事な動きだ...
「いやあ、はむ、何を言ってるんですか、はむ、足引っ張って...
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一方、こちらのちゃぶ台。中央には一際大きなお皿に山と積...
#br
「いやいや、むぐ。何というのかな、むぐ、気構えというもの...
「まあ、はむ、修羅場は何度も、はむ、経験してましたからね...
#br
それを次から次へと口にしながら話をしているのは、羅須侘...
#br
「呆れた……あんなにあるんだからもっとゆっくり食べればいい...
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その様子を見ながらグラスを傾けるのは比月コウ。二人を見...
#br
「いや、グレイさんはともかく、羅須侘さんまであんな鳥好き...
#br
そしてコウの隣で、なんとか強奪してきたなけなしの焼き鳥...
#br
「さあ……どうだったかしら」
「あら、知らなかったの? 二人とも」
「お、軍師」
#br
そこに現れたのは、蓮田屋女史――パレードの時の新調した正...
#br
「何かあの御二人、戦闘中に友情を深められたみたいですね」
「そういえば何か言ってたわよね。『帰ったら山程鶏肉喰って...
「ああ、俺も聞いた。『ばっかやろ、シェフの鳥料理は渡さん...
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にこやかに告げる蓮田屋とは対称的に苦虫を噛み潰した顔の...
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「ふふ、いいこと思いつきました♪」
#br
そう言ってさらに笑みを深めた蓮田屋女史は、酔っててふら...
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「ぐれ〜いさん、初陣お疲れ様っ」
「はむぐふっ!!」
「おお、むぐ」
#br
後ろから急に首根っこに抱きつかれて、何か目を白黒させて...
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「ほんと〜に助かります、ふふ。グレイさん、あ・り・が・と...
「……あ、当たってる」
「当ててますもの♪」
「どっかで、むぐ、聞いたような、むぐ、やり取りだな。むぐ」
「……さ、刺さってる」
「計算通りですもの♪」
「……軍師、怖ぇ」
#br
蓮田屋女史の抱きつき攻撃プラス耳へのささやき攻撃でグレ...
#br
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ」
「あ、ここぞとばかりに羅須侘さんのスピードが上がった」
「まったく、あの男は……」
「あ、嵐さんだ」
#br
コウが羅須侘の様子に目を見張っていると、その横から凄爆...
#br
「……って、その手に持ってるのって、うわ」
#br
嵐が右手に持っているもので、コウが確認する間もなく羅須...
#br
「むぐふうっ!!」
「いい加減にしろ。お前達がいるからとたくさん作ったが、独...
#br
相変わらずの無表情ではあるが、良く見れば彼の額にうっす...
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「ちょ、ちょっと嵐さん! そ、それって包丁!?」
「大丈夫、峰打ちだ」
「総料理長、ひょっとして酔ってます……って、ちょ!!」
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宗が慌てて駆け寄ってくるが、瞬速で己の喉元に突きつけら...
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「誰が酔っているものか、失礼な……って何故立っているのだ、...
「いや、俺、岩元ですよっ!!」
「あ、嵐さんっ! 危ないですってぇぇ!」
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#br
§ § ...
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「外世界技術品かあ……一体何があるんでしょうねえ」
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そして、最後にこちらのちゃぶ台。ここは先の二卓とはうっ...
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「うふふ、装飾品とかないのかしらン? あればさぞ美しいの...
「技術……画期的且つ斬新なデザインの眼鏡とかないんでしょう...
「画期的且つ斬新なデザインの靴下の方がいいんじゃないかな...
「何でもええけど、売っ払って大金が転がりこんで来うへんか...
「……台無しもいいところですね」
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その傍らで瞳を爛々とさせてくねくね身悶えをしているかち...
そんな四人に冷ややかな眼差しを送る四条だが、勿論誰にも...
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「まあ、いいじゃないですか。こんな場なんですから」
#br
愚痴る四条に、隣のちゃぶ台からルクスが声をかけてきた。...
#br
「おっと、有り難う御座います。この度は本当にお疲れ様でし...
「いえいえ、大した事してませんから。それより……本当に、み...
#br
返杯、と徳利を差し出す四条に応えて、自分の杯に満ちてい...
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「うふふふふ、外世界の宝石、貴金属……あぁん、くらくらしち...
「一つ目用の眼鏡とか、お腹にかける眼鏡とかぁ……」
「色は白しか認めないが……一本足のやつなら右足用なのか左足...
「とりあえず、売っ払って大金になってくれたらそんで……」
#br
ルクスの気持ちなぞうっちゃって、夢見心地コンティニュー...
#br
「ってか、なんできね子さんがいるんですか?」
「そう言えば、司会進行もされてましたね」
「……あんたら何を今更言うとんねんな」
#br
最後の台詞を呟いた少女――それはマネー・きね子嬢であった...
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「うちはな、国王はんが、シェフ殿はともかく、みんなにスタ...
「……ふふ、陛下らしい思い遣りですね」
「そうですね……じゃ、きね子さん、如何です?」
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ルクスはきね子にも徳利を差し出す。彼女が差し出したのは...
#br
「お陰様で無事に帰ってこれました。で、明日から例のものを...
「もう、宰相閣下、水臭いわあ。泥船に乗ったつもりでおり〜」
「ま、突っ込むのは野暮ですかねえ」
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微笑ましい二人をよそに四条はそう呟くと、再び窓の外へと...
そこには煌々と輝く満月が、あたかも無事帰還した戦士達を...
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「あれ? そう言えば誰か足りないような……」
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#br
§ § ...
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#br
ここは、国王執務室のベランダ。
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「そう……」
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その欄干に、一升瓶片手に仁王立ちする男。
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「私は……」
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砂漠の国の夜……低い気温や砂混じりの風もなんのその。
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「天才だああああああああああああああああああああああああ...
「こけえええええええええええええええええええええええええ...
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……何かの鳴き声とシンクロしたその声は、国中に響いていた...
#br
#br
#br
CENTER:〜Fin.〜
#BR
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**源様作『羅幻王国のとある一日 〜源篇〜』 [#gae5b436]
地面にちょこんと腰を下ろすと、グレイから招聘されて羅幻...
露骨に顔をしかめ、ずれた眼鏡を直し、水溜りを作りそうな...
一通りシャツの汗を搾りつくして一息ついた彼女は、ズボン...
半ば恍惚としながら、同じポケットから煙草と愛用の形の歪...
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「くはぁ〜」
#BR
その口から出てきたのは、紫煙と、加齢臭が漂ってきそうな...
パイロット訓練が終了したばかりであった。訓練所から出て...
源がこうしてパイロットという軍籍に就いて、今日で丁度一...
この国での実戦経験は無いが、入国するまでは他国の外人部...
砂漠を面にした国である。日中の暑さは半端なものではない...
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「随分とへばってたみたいだな、おい」
「すぐに慣れろ、っていうのは酷な話ですよ」
#BR
振り向くと、丁度兵士達の状況を視察に来ていたらしい、蓮...
#BR
「ま、程ほどにやってますよ」
#BR
くたびれた声で答えながら、源は紫煙を吐き出し、手にした...
#BR
「……何というか、その、程ほどにしておけ」
「分かってますとも。第一、酒でどうにかなる体じゃあないで...
「まぁまぁ、グレイさん。訓練の様子じゃ、結果は出してる事...
「話が分かりますね、蓮田屋さん。そりゃ、仕事となればやり...
「それは暗に、仕事以外でならずっと飲んだくれてるって事か...
「仕事にしたって、軽くひっかけた方が調子が出ますけどね」
「お給金の大半がお酒と煙草に消えてるってだけあるわ……」
「ダメ女め」
「はっはっは。ダメ女のレッテルは甘んじて受けましょう」
#BR
からからと笑う源に、呆れ混じりの溜息を吐くと、グレイは...
#BR
「……いざと言う時は頼むぞ、まったく」
#BR
源を見るグレイの目はまるっきりダメな子を見るそれではな...
#BR
「いざとなれば、ね」
#BR
咥えた煙草の先を見つめながら、源は言う。たなびく煙を追...
#BR
「あら、綺麗」
「ですね……」
#BR
源の視線につられた蓮田屋とグレイは、目を細めて赤く染ま...
意識しなければ意外とお目にかかれないものだ。たまにこう...
#BR
「夕陽を肴に一杯、ってのも、また乙な物ですなぁ。いい具合...
「お前にはそれしかないんかいっ」
「ふぎゃっ」
#BR
彼女の言葉に風情もぶち壊しであった。
#BR
※
#BR
訓練の後の一服を終えた源は、宮殿内にある食堂を訪れてい...
#BR
「混んでるね、こりゃ」
#BR
食堂はほぼ満席。ちらほら見かける空席もあるのだが、新参...
どうしたものかと辺りを見回していると、ふと目に付いた席...
#BR
「呼ばれてる、のかな」
#BR
おずおずとテーブル席に近づいてみれば、二人とも笑顔で間...
#BR
「まるで借りてきた猫だな、そうかしこまらなくてもよかろう」
「まだ国に来てから間も無いから仕方ないでしょう。さ、どう...
「は、はぁ……」
#BR
そうそうたる面子に囲まれ、源はいたたまれぬ空気を感じな...
この二人とは、以前入国手続きの際に一度顔を合わせたきり...
#BR
「いやー、一度貴女には伺いたい事がありましてね」
「うむ。先ほどもその話で少し、な」
#BR
ただの新参者の話題がどこから湧いて出てくるのか? 不思...
#BR
「何ですか? 聞きたい事って」
「……それなのだがな」
#BR
若干重苦しい声の響きで、羅須多は源に言う。
#BR
「君がこの国に来ると決めた時の話についてだ」
「はぁ?」
「ああ、気を悪くしないでください。ちょっとした噂話があり...
「噂話って……」
「グレイ殿が君を招聘したというのは周知の事実だ。――――ああ...
「あ、あの事ですか」
#BR
招聘の際、源とグレイとの間に交わされた五分の会話。どこ...
どうせ隠すほどの事ではないし、実際の所三分も話していな...
#BR
「別に、面白い事なんて無いんですけどね……」
#BR
そう前置きをして、彼女は例の会話の内容を訥々と話し始め...
#BR
※
#BR
「こちらグレイ。聞こえるか、源」
「良好です、グレイさん。随分と唐突ですねぇ、ついでに、お...
「まったくだ。何年か振りになるかな。まぁ、前置きは置いて...
「はぁ、何でしょう」
「今、成り行きで羅幻王国で働いていてな」
「へぇ、そりゃまた、ようやく貴方も落ち着きましたか」
「まぁな、で、だ。物は相談なんだが……お前も来ないか?」
「羅幻王国に?」
「そうだ」
「いいっすよ」
「そうか、助かる」
「じゃ、また後日」
「あーい」
#BR
※
#BR
「と、まぁ、大体こんな具合でして」
「「…………」」
#br
さらりと話し終わった彼女に対して、露骨な呆れの表情が向...
#BR
「な、何でしょう?」
「ああ……その、何だ。それで全部か?」
「はい、そうですが?」
「何と……五分どころか、一分二分の世界じゃないですか貴女」
「そうですねぇ、どこかで話が大きくなったんでしょうね。何...
「そう言う問題かね」
「どうなんでしょう?」
「…………」
#br
源には向けられる視線の意味が分からない。そのくらいに彼...
#br
「グレイさんもですが……貴女も……随分豪快な性格なのですね」
「いやー、そんな豪快なんてもんじゃないですけどねぇ。とり...
「「…………」」
#BR
源は気づいていない。ルクスの笑みが引きつっている事に。...
#BR
「人生是ネタ也。モットーですんで」
#BR
アホである。生粋のアホが、ここにいた。
#BR
※
#BR
食堂ではとても食事どころではなかった。一通りの話を終え...
そもそも腹が減っていなかったので、食事自体は割とどうで...
食堂の人に言って適当に見繕ってもらった物だ。既に飲みの...
#BR
「後は、酒だな」
#BR
宮殿の廊下をぽてぽて歩いて、源は貯蔵の酒に思いを馳せる...
体は疲れているものの、足取りは軽い。スキップに近い歩調...
――あ、こりゃ間に合わんね。
心の中で冷静に呟いて、咄嗟に身構える。小柄とは言え、彼...
#BR
「ダイナマイッ!」
「な――――げふぅっ!」
#BR
前方に人がいると悟った影は、スピードを緩めるどころか、...
#BR
「あっちゃ、急いでたからつい。やー、でも凄いいい角度で入...
#BR
下手人は小柄な女性。彼女は悪びれた様子も無く、倒れ伏し...
#BR
「おーい。生きてる?」
「……随分な物言いを……って、あいたたた……陛下でしたか」
「イエス。まさしくその通りよ」
#BR
源に強烈な体当たりを食らわせた人物は、何故か源の言葉に...
#BR
「ほんと急いでて、ごめんね?」
「急ぐのは構いませんが、ダイナマイッ! って……」
「ダイナマイトタックル。即興で作ってみたんだけど」
「……名前通りの威力でしたよ……」
「えへー」
#BR
羅幻については、入国時に一度謁見の機会があった程度であ...
#BR
「ええと、君、確か……源ちゃん、だったかしら」
#BR
腰をさすりながら立ち上がった源に対し、羅幻の遠慮の無い...
#BR
「おや、一介の兵士に過ぎぬボクの名を覚えておいでとは。い...
「あはは。面白い人は一度会ったら忘れないわ。件の話とかは...
「グレイさんとの話ですか」
#BR
源が言うと、羅幻は「そうそう」と頷いて思い出し笑いをし...
妙な所にまで回った物だ。あのバカ話も。
#BR
「っと……それはさておき。そうねぇ、君なら話が分かりそうか...
#BR
話をしていながらも、ずっとそわそわとしていた羅幻は、ま...
一体何がどういう話が分かるというのか。考えても仕方無さ...
#BR
「ええと、もしかして今取り込み中ですか?」
「有り体に言えばそうね。その上で、君を見込んでの話なんだ...
「何を見込まれたかはよく分かりませんが、陛下直々の頼みと...
#BR
そう源が返せば、途端に羅幻の瞳が爛々と輝き始めた。何事...
#BR
「あの、私を明日まで匿ってくれない?」
「はぁ?」
#BR
突拍子の無い羅幻の頼みに、思わず源は間抜けな声を漏らし...
#BR
「やー、皆が食堂に集まってる時間帯狙ってサボタージュとし...
「成る程ね」
#BR
源の読みは大当たりであった。これもまた風評通りの行動で...
元より自身がそういう人間だと、源は嫌という程に自覚して...
#BR
「いいでしょう。ボクの部屋で良ければ、是非に」
「ほんと? やたっ」
「ただし、一つ条件がございます」
「へ?」
#BR
人差し指を上に立て、口の端を吊り上げ、源はにやりと羅幻...
にやにや笑いを崩さぬまま、源は手で杯を形取り、口元へ持...
#BR
「こちらは行ける口ですかな?」
#BR
飲むのなら一人より二人、二人より三人。多ければ多いほど...
源の言葉に、羅幻は鼻を一つ鳴らし、にやりと笑った。
#BR
「勿論。ふふっ。我ながらいい人間捕まえられたわ」
#BR
※
#BR
翌日、強烈なアルコール臭を纏い、ふらふらになった羅幻が...
#BR
「うぅぅ……あの子一体どれだけ飲むのよ……」
#BR
#BR
**グレイ様作『よろず屋出張記〜になし藩戦後復興支援〜』 [#...
「えーっと、陛下?」
「どしたの? グレイさん」
「いえ、少しお暇を頂こうかと思いま……」
「えーっ!! ちょっとなんでよ! 今離れられたらこの国はど...
「にょって……いや、そうじゃな……」
「やっぱりあれ? 支給した鶏肉に飽きちゃったっていうの!?」
「だから、そうじゃな……」
「こうなったら支給量を倍にする! グレイさんの好きなハツ...
「陛下、ちょっと聞いてくだ……」
「お願い……ぐすん……行かないで……」
「ああああああああああああああっ」
#BR
#BR
#BR
『よろず屋出張記〜になし藩戦後復興支援〜』
#BR
#BR
#BR
ここは羅幻王国から1000キロ以上離れた西の国……ぶっちゃけ...
その国のとあるビルの前に一台の大型クロウラーが到着した。
#BR
「ふう、着いたか」
#BR
運転席から下りた人物はそう呟きながらひとつ伸びをする……...
#BR
「しかし、良く通れたよな……わかってはいても冷や冷やする」
#BR
『共和国側だけど支援がしたい』と復興支援事務局に内密に...
になし藩国に根源種族が襲いかかり、大ダメージを被ったと...
#BR
『日常生活の基盤が破壊された時の絶望感は、破壊の原因が何...
#BR
過去に同じ経験を持つ源と交わした会話でも、彼はそう言っ...
#BR
「グレイ卿。で、ここからはどうするのだ?」
#BR
助手席側から降り立ったのは凄爆嵐――羅幻王国の厨房を取り...
#BR
「ええ、まずは復興支援事務局に出向きます。人的物資が何よ...
「まあ、妥当な所だな。ある材料でできるだけ美味い物を作る...
「ええ、お願いします。同じ味が続くってのは結構辛いもんで...
「私は何をすればいいのですか?」
「おわ、ヴィス卿、起きたのか」
「私も起きました〜」
#BR
後部座席から現れたのは、最近羅幻王国国民となった二人で...
ヴィスは元々源の友人であり、グレイの五分間交渉で入った...
#BR
「うん、まあ、ちょっと待ってて。とりあえずは挨拶して来る...
#BR
#BR
#BR
§ § ...
#BR
#BR
#BR
「復興支援?」
「はい。どうしても放っておけなくて……」
宥め賺してやっと落ち着いて聞く体勢になった羅幻に、グレ...
#BR
「聞けば、共和国側からも幾つかの国が名乗りを上げている様...
「それがさっきの『お暇』なわけね」
「ええ、勿論目処が立ったら直ぐに帰って参ります。それと、...
「ふむ……」
#BR
羅幻が口をとがらせて何か考えている。
#BR
「有事の際は迅速に帰って参りますから……お願いします!」
「あ、別に支援に行くのは問題ないのよ? 私も気になってた...
「じゃあ……」
「うん、四人が抜けても大丈夫か考えてただけだから。ま、大...
「ええ、私が不在の間の人材は確保してますっ」
「うん、行ってらっしゃい。私も王様じゃなかったら行きたか...
「あ……」
#BR
羅幻の表情が少し曇り気味な理由を少しかいま見たグレイで...
#BR
「……今度、ちょっとどっか行きましょうか? 向こう側に、い...
「……うんっ♪」
#BR
#BR
#BR
§ § ...
#BR
#BR
#BR
「というわけで、やっぱりシェフ殿は炊き出し班ですね。ヴィ...
「わかった。任せるが良い」
「わかりました」
#BR
シェフはその名の通り。ヴィスは優秀なシステムエンジニア...
#BR
「私は?」
「倖ちゃんは俺と一緒に土木復興の方だね。重機の運転をお願...
「はいっ! どんな乗り物だって乗りこなせます!!」
「うん、頼もしいな。よろしく頼むよ。それじゃ……」
#BR
と、グレイが続きを言おうとしたら、なにやらでかいエンジ...
#BR
「お、早い。流石だな」
#BR
資材運搬トラックと重機を積んだトラック、ダンプなど10数...
#BR
「グレイさん! 持って来たで! 出前迅速や!」
「おお、針千本卿」
「お疲れ様です。もう搬入場所は聞いてきてますので、この通...
#BR
グレイが手にしていた書類を針千本に渡す。それを見た針千...
#BR
「おう! 泥船に乗った気持ちでおったらええで?」
「ヴィスさん、うちの国の関西弁使いって、泥船がデフォルト...
「……どうだろう」
#BR
ヴィスと倖が首を傾げる。羅幻王国で関西弁を使う人間は針...
#BR
「よし。じゃあ、始めるとしましょうか」
#BR
グレイは指を鳴らしながら、集まってくれたみんなと共に、...
#BR
#BR
#BR
参考文献:南天@後ほねっこ男爵領様作SS http://minamite...
九頭竜川@愛鳴藩国様作SS http://namelessworl...
#BR
#HR
#BR
終了行:
*王立図書館4F [#v3af70c0]
イベントなどで提出するSS等の文章類を掲示しております。
#contents
**羅幻雅貴作『無能女王即位 ~あるいは、無能王女の策略~』 [...
ふやりふやりと酒を呑む。周囲に転がっている酒瓶は一人で...
#BR
「王女様、それ以上はもうやめたほうが……」
「あによぉ〜、呑んだって良いじゃない」
#BR
ルクスが酒を取り上げようとしたので、手元にあったレバー...
#BR
「で〜〜〜〜ん〜〜〜〜かあああああぁぁぁぁぁぁ」
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そのまま、突然開いた落とし穴に落ちていく……行き先はこの位...
……まあ、地下牢かもしれないけど、そんなこと今は知ったこ...
#BR
「……父上、死んじゃった……って、嘘でしょ」
#BR
父上――羅幻王国国王が死んだ。私にはいまだに実感が沸かな...
父上は王という仕事の上に、技術者としても腕が良かった。...
#BR
「……ばかやろー」
#BR
王女にはあるまじき言葉だろうが、大声で叫ばないだけマシ...
#BR
「父上のばかーーー!! アホーーー!! 無責任ーーー!! 死ぬ...
#BR
ほぼ理不尽で占められている叫びを放ち、また酒を呑む……ま...
#BR
「……『おうさま』かー……自信無いなあ」
#BR
深くため息を吐き出し、天井を見上げる。
#BR
『羅幻王国の国王』
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羅幻王国の頂点にして、最高権力者であり、そして一番の責...
そんな椅子に座るのだ。しかも、国内の古狸や、各国藩王と...
そこまでやれる自信は……無い。
#BR
「あ、そっか、じゃあ」
#BR
ふらりふらりと揺れつつ父上の部屋へ入って鍵を締めると、...
そうやって引っ張り出したデータを父上のベッドで寝転びな...
#BR
「……蓮田屋……あー、時々名前聴く人だー」
#BR
砂漠を歩いていれば、時折聞く名前だ。どうやら父上、しっ...
#BR
「よし、この人ヘッドハンティング! で、次がルクスさんに...
#BR
ぺらりぺらりと人材表をめくっていけば、優秀な人材がどん...
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「よっし、ウチにも優秀な人材いるわね。じゃあ無能な上役は...
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どこか邪悪を思わせるような笑みを零しながら、真っ黒い手...
その手帳には『おうさまの閻魔帳』とこっそり書かれていた...
#BR
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#BR
さて、それから一週間後の、海の上。レジャー用の小舟の上...
#BR
『愁壬王急死。 王女、喪中につきコメントを差し控えるとの...
『王宮爆発トトカルチョ開催中。締切は毎月5日朝10時まで電...
『チーズケーキグランプリ開催。ベイクドとレアチーズ、どち...
#BR
「……『王の急死』、か」
「ええ、そういうコトにまとめたわ。で? どうするの? こ...
「私が『暗愚』なのは知ってるでしょ? 国家を立て直す良い...
#BR
顔を歪ませ、嗤う。そう、その為の準備は整いつつある。人...
#BR
「まあ、有能な人材は居るけど、押さえ込まれてた分不満もた...
「『勝手なコトするな』ってネ?」
「そゆコトね。で、この方式だとウチは破綻するわ。だって、...
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一向に釣れる気配のない釣り糸を見ながら、ただ事実を言っ...
今の状況では『ただそれだけ』で終わりそうな予感もするが...
#BR
「これから全部を判ろうとするには、時間が無さ過ぎるわ。わ...
「有能な王様になるのは、それからでも遅くないってこと?」
「そ。つまり、私自身の時間稼ぎも含めて、今やらなきゃいけ...
「きっぱりはっきり言うネ、まったく」
「王様ってのは、そういうモノなんでしょ?」
「まったく、その通りだけど……面白くなりそうね」
#BR
私がにやりと笑ってみれば、かちゅーしゃ前摂政も笑う……今...
話が少し切れたので、釣り糸を戻して仕掛けを施し海に投げ...
#BR
「……ねえ」
「ん? なに、かっちゃん」
「それだけでも、アナタ随分有能なおうさまになると思うのだ...
「当然。だって、実際私は無能だもの。計算シートの一つくら...
#BR
ふう、とため息をついて横に置いておいた計算シートをバッ...
父上なら完璧にこなせるだろうことが全然できない事は、こ...
#BR
「……ルクスさんをまず宰相に置くわ。そして外部から『蓮田屋...
「ああ、あの。時々噂を聞くくらいだけど……」
「即位式が終わった後、すぐに私自身が彼女と交渉してみる。...
「忙しくなるネ、随分と」
「かっちゃんにも協力してもらうわよ? 有能で、腹心の人な...
「えー、私仕事したくないー。ギャグしてたいー」
「そー言わない。私だって本当は外行って遊びたいんだもの。...
「さ、最後が不穏……」
#BR
そう、やりたいことを国家の運営とかに差し障りのないよう...
#BR
「ま、ね? 王様が抜けたくらいで壊れるような国家なんて脆...
「まあ、それは言えてるわね、お・う・さ・ま?」
「あら、まだ私王様じゃないわよ? 事実上そうであってもま...
「まあったく、お腹まっくろだわねぇ」
「……かっちゃん、糸引いてる」
「おおっと! 今夜の晩ご飯!!」
#BR
ぴん、ぴんと釣り糸が引いていたのを、かちゅーしゃが慌て...
#BR
「おおー、処置までお見事〜」
「まあねー。そっちは釣れたの?」
「これから釣るわよ。『人材』という大きな獲物をね。お魚……...
「まあ、しょうがないわね。で、これがバレて暗殺とか来たら...
「一つの国家といえど、藩領である以上、王がいなければ当代...
「……内乱にもなりかねない、という事ね?」
「そうなったら私は本気でコトを起こすわよ。国民を路頭に迷...
#BR
ふふ、と小さく笑って糸を見れば、こちらも引いている。リ...
#BR
「ま、ね? 私が『暗愚』と信じて色々情報漏らしたりしてく...
「随分情報漏洩が甘くなってる部分あるから、それも狙うのも...
「起こってしまった事より、対処が必要よ。私が今一番欲しい...
「大鉈……ね、随分とまあ、この国も腐ったものね」
「仕方無いわよ。古い国には良くある事だわ」
「……大鉈の振るい方くらいは知っているわね? おーじょさま...
「勿論。大鉈の振り方は、お手本が山程あるし、見て来たもの...
「そうねえ、私のLOVE&PEACEにも一匹釣らないと。がんばらな...
#BR
にっこり笑い合うと魚の群れを見つけようとソナーを起動さ...
さあ、これからどうなるか、恐れと期待で胸をどきどきさせ...
#BR
#BR
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#BR
3ヶ月後。
新王即位の儀式後、皆を集めてにこにこ笑いながら、私はそ...
#BR
「新王即位、おめでとうございます。して、王様、何故我々を...
「うふふ、ありがとー。うん、新しい王様になったから、新体...
#BR
ざわつく臣下達を前にあくまでもいけしゃあしゃあと言い放...
#BR
「それでね」
#BR
指を鳴らせば、現れるのは我が国が誇る軍の精鋭達。それに...
その中で総ての事情を知っているかちゅーしゃ前摂政は、に...
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「調べてみたら、面白い話が上がって来ててね〜。ナニコレ?...
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うふふ、とあくまでも可愛らしく笑いながら、次々と流れて...
父様の目に狂いは無かったし、間違ってもいなかった。これ...
うん、やっぱり私は無能だ。
#BR
「羅幻王国藩王、羅幻雅貴の名において命じます。そこの犯罪...
「お、王よ!! お聞き下さい!! 我々は国のためを思って……!!」
「国民を裏切り、先王の信頼をも裏切ったその罪は深いわ……一...
#BR
あくまでも笑顔を崩さずに言い放つと、家臣達が歩兵に引き...
#BR
「さあって、邪魔者は消えたわ。んで、ここに残った、あなた...
「……つ、つまり、これをしたかったから私達を呼んだと?」
「そーよ、ルクスさん。貴方は宰相になってもらうねー。かっ...
「え? ……え、え、え、え、え、えええええ!?」
「えー! 私仕事したく無いって言ったじゃないの〜。ギャグ...
#BR
奇声を上げて自分を指差して固まるルクスとぶーたれるかち...
それにはたと気付いて、「ああ」と声を出したルクス――どう...
#BR
「お、王様っ、どこに行くのですか!?」
「蓮田屋藤乃さんを、正式にヘッドハンティングに行くのよ。...
#BR
そう言って、私は外へと駆け出した。前途多難だけど、この...
#BR
さあ、戦いをはじめよう。無能でも愚劣でも、それでも私は...
#br
#br
**グレイ様作『戦い終わって夜も更けて 〜戦勝祝賀会〜』 [#...
ここは羅幻城地下にある統括通信センター。 国内の情報や...
その中央管制室の中を、かなり場違いな愛らしい少女がひっ...
#br
さて、彼女が何故うろうろしているのかというと、早朝に出...
#br
「う〜、まだかにゃ……まだなのかにゃ」
#br
尤も、愛らしい外見に加えてその可愛らしい呟き声のせいで...
すると、管制室の自動ドアが開き、二つの人影が入ってくる。
#br
「……陛下、ちょう落ち着こうや。そんなんしたってあいつら帰...
#br
一人は針千本。魂の故郷が東京なのに大阪弁を駆使する謎の...
#br
「そうだ、陛下。後学の為にも今からどっしり落ち着く事を身...
#br
表情一つ変えずにそう告げるのは凄爆嵐、羅幻王国の総料理...
#br
「そら、サンドイッチを作ってきた。ウバの紅茶も用意したか...
#br
微かに、ほんの微かに唇を上方へ歪ませて、持っていたトレ...
#br
「……食欲ないにゃ」
「こーら、そんなことゆうとったら、俺が喰うてまうど」
「しかし、昨日から何も食しておらんだろう。あいつらを迎え...
「むぅ」
#br
口をとがらせる羅幻。その様子をやれやれと肩を竦めながら...
すると、その時。
#br
「陛下! 軍師殿から入電です!!」
#br
オペレータの一人がプリントアウトされた紙を手に立ち上が...
#br
「早く、早く読むにゃ! なんと言っておる?」
「ちょ、陛下っ」
「陛下餅付け。揺らしたら読めるもんも読まれへんで?」
#br
オペレータにしがみついてぐらぐら揺する様に苦笑を浮かべ...
#br
「わ、わかった。わかったから降ろせ〜」
「ジャ、ジャミングが激しいので、短文だけ送られてきました...
#br
その瞬間、管制室は歓喜で爆発した。
あちらこちらで歓声があがり、走り回る者、抱き合う者、踊...
#br
「いよっしゃああああああああああ!! やりおった、あいつら...
#br
天に拳を突き出しながら叫ぶ針千本もその一人であった。一...
#br
「よかったにゃ……よかったにゃ……」
#br
嵐の胸で泣いていた。その大きな瞳から、安堵と喜びが涙の...
#br
#br
国家再建後の初戦。羅幻王国軍は一人の死者を出すことなく...
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#br
『戦い終わって夜も更けて 〜戦勝祝賀会〜』
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#br
#br
「てなわけで、改めて、身内での祝勝会の始まりやっ!」
#br
国王執務室は見るも無惨な状況に様変わりしていた……つまり...
#br
「まずは、吶喊でこの美味そうな料理を大量に作ってくれた、...
#br
その言葉を受けて響く割れんばかりの拍手……しかし嵐は全く...
#br
「次に、場所と軍資金を提供してくれた、我らが国王陛下に拍...
「任せなさい! こんな時の為ならへそくりの一つや二つ!」
#br
再び拍手が巻き起こる……嵐とは正反対な対応を見せる羅幻で...
#br
「そして、最後に……」
#br
その台詞を受けて、当たりはシンと静まる。なかなか心得た...
#br
「修羅場を無事乗り越えて生還した、12人に拍手や!!」
#br
残念ながら、その12人以外には6人しかいないので先程まで...
#br
「では乾杯の音頭を……ここはルクス宰相閣下にお願いするわ!」
「うぇ!?」
#br
いきなり話を振られて、みんなの様子をにこにこと見守って...
#br
「あー、で、では僭越ながら」
#br
顔を赤くしながら、こほん、と咳をつきながら立ち上がるル...
#br
「えー、まずはこの……」
「長い!!」
「ちょっ」
#br
出だしからいきなり入った突っ込みに慌てるルクスである。...
#br
「ま、いいや。固いことは抜きにして、乾杯!!」
『かんぱ〜い!!』
#br
至る所から響く、グラスの交わる音。公務を全て終らせて集...
#br
#br
§ § ...
#br
#br
それではまず、このちゃぶ台から見てみよう。
#br
「にゃははははは」
「ご機嫌だな、陛下」
#br
そこには今回パイロットを務めた三名、ぱんくす卿、シノブ...
ぱんくすの背中におんぶする羅幻……私服なのか、カジュアル...
#br
「そりゃそうにゃのにゃ〜」
「ちょ……いいんですか? たしか陛下って」
「……未成年の人が真似しないようにしないとな?」
#br
呆れるシノブに寛は苦笑混じりに呟く……全く、王国のトップ...
#br
「ぱんさんには世話になりっぱなしだにゃあ。こにょ前にょ偵...
「何を言う。活躍の機会を与えてくれて感謝している」
「むふ〜、そう言ってくれると嬉しいにゃ〜」
#br
やや苦笑混じりのぱんくすに頬ずりする羅幻。ぱんくすの方...
#br
「こうやって見ると親子みたいですねえ」
「ちょう、シノブ。せめて兄妹と言うたりいな」
「あ、中隊長」
#br
シノブが生暖かい眼差しでそう呟くと、ジョッキを片手に針...
#br
「それから、勤務期間中はその中隊長ってやめえな。むず痒い...
「あ、すみません」
「針千本、今回は悪かったな。出来れば変わってやりたかった...
「何言うとるんよ、あの作戦やったら寛の方が適任や。ま、ち...
#br
そう言ってジョッキを傾け、一気に飲み干す針千本。見た目...
#br
「しかし陛下、ご機嫌やな〜。ぱんくす、チャンスや、なんか...
「ふふ、そうだな。折角のこういう機会なんだ、少し恩を着せ...
#br
そして苦笑から良い笑顔に表情をシフトチェンジするぱんく...
#br
「にゃ?」
「おい、ぱんくす。酔ってる時に言っても仕方なかろう」
「え、なんなんですか?」
「いや、陛下はいっつもあんなもんやろ?」
#br
シノブには分からなかったが、出発前にぱんくすとした会話...
#br
「シノブはまだちょいと早い、かな。陛下……」
「にゅ?」
#br
ぱんくすの背中で目を丸くする羅幻。何故か尻尾まで丸まっ...
#br
「……俺と寛……後、針千本に、イエロージャンパーを着る許可を...
「うお……そう来たか」
「にょ!?」
「……いや、しゃべりましょうよ陛下」
「駄目だな、これは……」
#br
#br
§ § ...
#br
#br
「ふむ。しかし、むぐ、初陣とは思えぬ、むぐ、見事な動きだ...
「いやあ、はむ、何を言ってるんですか、はむ、足引っ張って...
#br
一方、こちらのちゃぶ台。中央には一際大きなお皿に山と積...
#br
「いやいや、むぐ。何というのかな、むぐ、気構えというもの...
「まあ、はむ、修羅場は何度も、はむ、経験してましたからね...
#br
それを次から次へと口にしながら話をしているのは、羅須侘...
#br
「呆れた……あんなにあるんだからもっとゆっくり食べればいい...
#br
その様子を見ながらグラスを傾けるのは比月コウ。二人を見...
#br
「いや、グレイさんはともかく、羅須侘さんまであんな鳥好き...
#br
そしてコウの隣で、なんとか強奪してきたなけなしの焼き鳥...
#br
「さあ……どうだったかしら」
「あら、知らなかったの? 二人とも」
「お、軍師」
#br
そこに現れたのは、蓮田屋女史――パレードの時の新調した正...
#br
「何かあの御二人、戦闘中に友情を深められたみたいですね」
「そういえば何か言ってたわよね。『帰ったら山程鶏肉喰って...
「ああ、俺も聞いた。『ばっかやろ、シェフの鳥料理は渡さん...
#br
にこやかに告げる蓮田屋とは対称的に苦虫を噛み潰した顔の...
#br
「ふふ、いいこと思いつきました♪」
#br
そう言ってさらに笑みを深めた蓮田屋女史は、酔っててふら...
#br
「ぐれ〜いさん、初陣お疲れ様っ」
「はむぐふっ!!」
「おお、むぐ」
#br
後ろから急に首根っこに抱きつかれて、何か目を白黒させて...
#br
「ほんと〜に助かります、ふふ。グレイさん、あ・り・が・と...
「……あ、当たってる」
「当ててますもの♪」
「どっかで、むぐ、聞いたような、むぐ、やり取りだな。むぐ」
「……さ、刺さってる」
「計算通りですもの♪」
「……軍師、怖ぇ」
#br
蓮田屋女史の抱きつき攻撃プラス耳へのささやき攻撃でグレ...
#br
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ」
「あ、ここぞとばかりに羅須侘さんのスピードが上がった」
「まったく、あの男は……」
「あ、嵐さんだ」
#br
コウが羅須侘の様子に目を見張っていると、その横から凄爆...
#br
「……って、その手に持ってるのって、うわ」
#br
嵐が右手に持っているもので、コウが確認する間もなく羅須...
#br
「むぐふうっ!!」
「いい加減にしろ。お前達がいるからとたくさん作ったが、独...
#br
相変わらずの無表情ではあるが、良く見れば彼の額にうっす...
#br
「ちょ、ちょっと嵐さん! そ、それって包丁!?」
「大丈夫、峰打ちだ」
「総料理長、ひょっとして酔ってます……って、ちょ!!」
#br
宗が慌てて駆け寄ってくるが、瞬速で己の喉元に突きつけら...
#br
「誰が酔っているものか、失礼な……って何故立っているのだ、...
「いや、俺、岩元ですよっ!!」
「あ、嵐さんっ! 危ないですってぇぇ!」
#br
#br
§ § ...
#br
#br
「外世界技術品かあ……一体何があるんでしょうねえ」
#br
そして、最後にこちらのちゃぶ台。ここは先の二卓とはうっ...
#br
「うふふ、装飾品とかないのかしらン? あればさぞ美しいの...
「技術……画期的且つ斬新なデザインの眼鏡とかないんでしょう...
「画期的且つ斬新なデザインの靴下の方がいいんじゃないかな...
「何でもええけど、売っ払って大金が転がりこんで来うへんか...
「……台無しもいいところですね」
#br
その傍らで瞳を爛々とさせてくねくね身悶えをしているかち...
そんな四人に冷ややかな眼差しを送る四条だが、勿論誰にも...
#br
「まあ、いいじゃないですか。こんな場なんですから」
#br
愚痴る四条に、隣のちゃぶ台からルクスが声をかけてきた。...
#br
「おっと、有り難う御座います。この度は本当にお疲れ様でし...
「いえいえ、大した事してませんから。それより……本当に、み...
#br
返杯、と徳利を差し出す四条に応えて、自分の杯に満ちてい...
#br
「うふふふふ、外世界の宝石、貴金属……あぁん、くらくらしち...
「一つ目用の眼鏡とか、お腹にかける眼鏡とかぁ……」
「色は白しか認めないが……一本足のやつなら右足用なのか左足...
「とりあえず、売っ払って大金になってくれたらそんで……」
#br
ルクスの気持ちなぞうっちゃって、夢見心地コンティニュー...
#br
「ってか、なんできね子さんがいるんですか?」
「そう言えば、司会進行もされてましたね」
「……あんたら何を今更言うとんねんな」
#br
最後の台詞を呟いた少女――それはマネー・きね子嬢であった...
#br
「うちはな、国王はんが、シェフ殿はともかく、みんなにスタ...
「……ふふ、陛下らしい思い遣りですね」
「そうですね……じゃ、きね子さん、如何です?」
#br
ルクスはきね子にも徳利を差し出す。彼女が差し出したのは...
#br
「お陰様で無事に帰ってこれました。で、明日から例のものを...
「もう、宰相閣下、水臭いわあ。泥船に乗ったつもりでおり〜」
「ま、突っ込むのは野暮ですかねえ」
#br
微笑ましい二人をよそに四条はそう呟くと、再び窓の外へと...
そこには煌々と輝く満月が、あたかも無事帰還した戦士達を...
#br
#br
#br
「あれ? そう言えば誰か足りないような……」
#br
#br
§ § ...
#br
#br
ここは、国王執務室のベランダ。
#br
「そう……」
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その欄干に、一升瓶片手に仁王立ちする男。
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「私は……」
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砂漠の国の夜……低い気温や砂混じりの風もなんのその。
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「天才だああああああああああああああああああああああああ...
「こけえええええええええええええええええええええええええ...
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……何かの鳴き声とシンクロしたその声は、国中に響いていた...
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CENTER:〜Fin.〜
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**源様作『羅幻王国のとある一日 〜源篇〜』 [#gae5b436]
地面にちょこんと腰を下ろすと、グレイから招聘されて羅幻...
露骨に顔をしかめ、ずれた眼鏡を直し、水溜りを作りそうな...
一通りシャツの汗を搾りつくして一息ついた彼女は、ズボン...
半ば恍惚としながら、同じポケットから煙草と愛用の形の歪...
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「くはぁ〜」
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その口から出てきたのは、紫煙と、加齢臭が漂ってきそうな...
パイロット訓練が終了したばかりであった。訓練所から出て...
源がこうしてパイロットという軍籍に就いて、今日で丁度一...
この国での実戦経験は無いが、入国するまでは他国の外人部...
砂漠を面にした国である。日中の暑さは半端なものではない...
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「随分とへばってたみたいだな、おい」
「すぐに慣れろ、っていうのは酷な話ですよ」
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振り向くと、丁度兵士達の状況を視察に来ていたらしい、蓮...
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「ま、程ほどにやってますよ」
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くたびれた声で答えながら、源は紫煙を吐き出し、手にした...
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「……何というか、その、程ほどにしておけ」
「分かってますとも。第一、酒でどうにかなる体じゃあないで...
「まぁまぁ、グレイさん。訓練の様子じゃ、結果は出してる事...
「話が分かりますね、蓮田屋さん。そりゃ、仕事となればやり...
「それは暗に、仕事以外でならずっと飲んだくれてるって事か...
「仕事にしたって、軽くひっかけた方が調子が出ますけどね」
「お給金の大半がお酒と煙草に消えてるってだけあるわ……」
「ダメ女め」
「はっはっは。ダメ女のレッテルは甘んじて受けましょう」
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からからと笑う源に、呆れ混じりの溜息を吐くと、グレイは...
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「……いざと言う時は頼むぞ、まったく」
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源を見るグレイの目はまるっきりダメな子を見るそれではな...
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「いざとなれば、ね」
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咥えた煙草の先を見つめながら、源は言う。たなびく煙を追...
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「あら、綺麗」
「ですね……」
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源の視線につられた蓮田屋とグレイは、目を細めて赤く染ま...
意識しなければ意外とお目にかかれないものだ。たまにこう...
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「夕陽を肴に一杯、ってのも、また乙な物ですなぁ。いい具合...
「お前にはそれしかないんかいっ」
「ふぎゃっ」
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彼女の言葉に風情もぶち壊しであった。
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※
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訓練の後の一服を終えた源は、宮殿内にある食堂を訪れてい...
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「混んでるね、こりゃ」
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食堂はほぼ満席。ちらほら見かける空席もあるのだが、新参...
どうしたものかと辺りを見回していると、ふと目に付いた席...
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「呼ばれてる、のかな」
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おずおずとテーブル席に近づいてみれば、二人とも笑顔で間...
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「まるで借りてきた猫だな、そうかしこまらなくてもよかろう」
「まだ国に来てから間も無いから仕方ないでしょう。さ、どう...
「は、はぁ……」
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そうそうたる面子に囲まれ、源はいたたまれぬ空気を感じな...
この二人とは、以前入国手続きの際に一度顔を合わせたきり...
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「いやー、一度貴女には伺いたい事がありましてね」
「うむ。先ほどもその話で少し、な」
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ただの新参者の話題がどこから湧いて出てくるのか? 不思...
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「何ですか? 聞きたい事って」
「……それなのだがな」
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若干重苦しい声の響きで、羅須多は源に言う。
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「君がこの国に来ると決めた時の話についてだ」
「はぁ?」
「ああ、気を悪くしないでください。ちょっとした噂話があり...
「噂話って……」
「グレイ殿が君を招聘したというのは周知の事実だ。――――ああ...
「あ、あの事ですか」
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招聘の際、源とグレイとの間に交わされた五分の会話。どこ...
どうせ隠すほどの事ではないし、実際の所三分も話していな...
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「別に、面白い事なんて無いんですけどね……」
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そう前置きをして、彼女は例の会話の内容を訥々と話し始め...
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※
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「こちらグレイ。聞こえるか、源」
「良好です、グレイさん。随分と唐突ですねぇ、ついでに、お...
「まったくだ。何年か振りになるかな。まぁ、前置きは置いて...
「はぁ、何でしょう」
「今、成り行きで羅幻王国で働いていてな」
「へぇ、そりゃまた、ようやく貴方も落ち着きましたか」
「まぁな、で、だ。物は相談なんだが……お前も来ないか?」
「羅幻王国に?」
「そうだ」
「いいっすよ」
「そうか、助かる」
「じゃ、また後日」
「あーい」
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※
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「と、まぁ、大体こんな具合でして」
「「…………」」
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さらりと話し終わった彼女に対して、露骨な呆れの表情が向...
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「な、何でしょう?」
「ああ……その、何だ。それで全部か?」
「はい、そうですが?」
「何と……五分どころか、一分二分の世界じゃないですか貴女」
「そうですねぇ、どこかで話が大きくなったんでしょうね。何...
「そう言う問題かね」
「どうなんでしょう?」
「…………」
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源には向けられる視線の意味が分からない。そのくらいに彼...
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「グレイさんもですが……貴女も……随分豪快な性格なのですね」
「いやー、そんな豪快なんてもんじゃないですけどねぇ。とり...
「「…………」」
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源は気づいていない。ルクスの笑みが引きつっている事に。...
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「人生是ネタ也。モットーですんで」
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アホである。生粋のアホが、ここにいた。
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※
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食堂ではとても食事どころではなかった。一通りの話を終え...
そもそも腹が減っていなかったので、食事自体は割とどうで...
食堂の人に言って適当に見繕ってもらった物だ。既に飲みの...
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「後は、酒だな」
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宮殿の廊下をぽてぽて歩いて、源は貯蔵の酒に思いを馳せる...
体は疲れているものの、足取りは軽い。スキップに近い歩調...
――あ、こりゃ間に合わんね。
心の中で冷静に呟いて、咄嗟に身構える。小柄とは言え、彼...
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「ダイナマイッ!」
「な――――げふぅっ!」
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前方に人がいると悟った影は、スピードを緩めるどころか、...
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「あっちゃ、急いでたからつい。やー、でも凄いいい角度で入...
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下手人は小柄な女性。彼女は悪びれた様子も無く、倒れ伏し...
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「おーい。生きてる?」
「……随分な物言いを……って、あいたたた……陛下でしたか」
「イエス。まさしくその通りよ」
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源に強烈な体当たりを食らわせた人物は、何故か源の言葉に...
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「ほんと急いでて、ごめんね?」
「急ぐのは構いませんが、ダイナマイッ! って……」
「ダイナマイトタックル。即興で作ってみたんだけど」
「……名前通りの威力でしたよ……」
「えへー」
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羅幻については、入国時に一度謁見の機会があった程度であ...
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「ええと、君、確か……源ちゃん、だったかしら」
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腰をさすりながら立ち上がった源に対し、羅幻の遠慮の無い...
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「おや、一介の兵士に過ぎぬボクの名を覚えておいでとは。い...
「あはは。面白い人は一度会ったら忘れないわ。件の話とかは...
「グレイさんとの話ですか」
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源が言うと、羅幻は「そうそう」と頷いて思い出し笑いをし...
妙な所にまで回った物だ。あのバカ話も。
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「っと……それはさておき。そうねぇ、君なら話が分かりそうか...
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話をしていながらも、ずっとそわそわとしていた羅幻は、ま...
一体何がどういう話が分かるというのか。考えても仕方無さ...
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「ええと、もしかして今取り込み中ですか?」
「有り体に言えばそうね。その上で、君を見込んでの話なんだ...
「何を見込まれたかはよく分かりませんが、陛下直々の頼みと...
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そう源が返せば、途端に羅幻の瞳が爛々と輝き始めた。何事...
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「あの、私を明日まで匿ってくれない?」
「はぁ?」
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突拍子の無い羅幻の頼みに、思わず源は間抜けな声を漏らし...
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「やー、皆が食堂に集まってる時間帯狙ってサボタージュとし...
「成る程ね」
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源の読みは大当たりであった。これもまた風評通りの行動で...
元より自身がそういう人間だと、源は嫌という程に自覚して...
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「いいでしょう。ボクの部屋で良ければ、是非に」
「ほんと? やたっ」
「ただし、一つ条件がございます」
「へ?」
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人差し指を上に立て、口の端を吊り上げ、源はにやりと羅幻...
にやにや笑いを崩さぬまま、源は手で杯を形取り、口元へ持...
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「こちらは行ける口ですかな?」
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飲むのなら一人より二人、二人より三人。多ければ多いほど...
源の言葉に、羅幻は鼻を一つ鳴らし、にやりと笑った。
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「勿論。ふふっ。我ながらいい人間捕まえられたわ」
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※
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翌日、強烈なアルコール臭を纏い、ふらふらになった羅幻が...
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「うぅぅ……あの子一体どれだけ飲むのよ……」
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**グレイ様作『よろず屋出張記〜になし藩戦後復興支援〜』 [#...
「えーっと、陛下?」
「どしたの? グレイさん」
「いえ、少しお暇を頂こうかと思いま……」
「えーっ!! ちょっとなんでよ! 今離れられたらこの国はど...
「にょって……いや、そうじゃな……」
「やっぱりあれ? 支給した鶏肉に飽きちゃったっていうの!?」
「だから、そうじゃな……」
「こうなったら支給量を倍にする! グレイさんの好きなハツ...
「陛下、ちょっと聞いてくだ……」
「お願い……ぐすん……行かないで……」
「ああああああああああああああっ」
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『よろず屋出張記〜になし藩戦後復興支援〜』
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ここは羅幻王国から1000キロ以上離れた西の国……ぶっちゃけ...
その国のとあるビルの前に一台の大型クロウラーが到着した。
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「ふう、着いたか」
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運転席から下りた人物はそう呟きながらひとつ伸びをする……...
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「しかし、良く通れたよな……わかってはいても冷や冷やする」
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『共和国側だけど支援がしたい』と復興支援事務局に内密に...
になし藩国に根源種族が襲いかかり、大ダメージを被ったと...
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『日常生活の基盤が破壊された時の絶望感は、破壊の原因が何...
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過去に同じ経験を持つ源と交わした会話でも、彼はそう言っ...
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「グレイ卿。で、ここからはどうするのだ?」
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助手席側から降り立ったのは凄爆嵐――羅幻王国の厨房を取り...
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「ええ、まずは復興支援事務局に出向きます。人的物資が何よ...
「まあ、妥当な所だな。ある材料でできるだけ美味い物を作る...
「ええ、お願いします。同じ味が続くってのは結構辛いもんで...
「私は何をすればいいのですか?」
「おわ、ヴィス卿、起きたのか」
「私も起きました〜」
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後部座席から現れたのは、最近羅幻王国国民となった二人で...
ヴィスは元々源の友人であり、グレイの五分間交渉で入った...
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「うん、まあ、ちょっと待ってて。とりあえずは挨拶して来る...
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§ § ...
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「復興支援?」
「はい。どうしても放っておけなくて……」
宥め賺してやっと落ち着いて聞く体勢になった羅幻に、グレ...
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「聞けば、共和国側からも幾つかの国が名乗りを上げている様...
「それがさっきの『お暇』なわけね」
「ええ、勿論目処が立ったら直ぐに帰って参ります。それと、...
「ふむ……」
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羅幻が口をとがらせて何か考えている。
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「有事の際は迅速に帰って参りますから……お願いします!」
「あ、別に支援に行くのは問題ないのよ? 私も気になってた...
「じゃあ……」
「うん、四人が抜けても大丈夫か考えてただけだから。ま、大...
「ええ、私が不在の間の人材は確保してますっ」
「うん、行ってらっしゃい。私も王様じゃなかったら行きたか...
「あ……」
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羅幻の表情が少し曇り気味な理由を少しかいま見たグレイで...
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「……今度、ちょっとどっか行きましょうか? 向こう側に、い...
「……うんっ♪」
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§ § ...
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「というわけで、やっぱりシェフ殿は炊き出し班ですね。ヴィ...
「わかった。任せるが良い」
「わかりました」
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シェフはその名の通り。ヴィスは優秀なシステムエンジニア...
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「私は?」
「倖ちゃんは俺と一緒に土木復興の方だね。重機の運転をお願...
「はいっ! どんな乗り物だって乗りこなせます!!」
「うん、頼もしいな。よろしく頼むよ。それじゃ……」
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と、グレイが続きを言おうとしたら、なにやらでかいエンジ...
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「お、早い。流石だな」
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資材運搬トラックと重機を積んだトラック、ダンプなど10数...
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「グレイさん! 持って来たで! 出前迅速や!」
「おお、針千本卿」
「お疲れ様です。もう搬入場所は聞いてきてますので、この通...
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グレイが手にしていた書類を針千本に渡す。それを見た針千...
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「おう! 泥船に乗った気持ちでおったらええで?」
「ヴィスさん、うちの国の関西弁使いって、泥船がデフォルト...
「……どうだろう」
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ヴィスと倖が首を傾げる。羅幻王国で関西弁を使う人間は針...
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「よし。じゃあ、始めるとしましょうか」
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グレイは指を鳴らしながら、集まってくれたみんなと共に、...
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参考文献:南天@後ほねっこ男爵領様作SS http://minamite...
九頭竜川@愛鳴藩国様作SS http://namelessworl...
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