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*王立図書館3F [#ef22e0e9]
イベントなどで提出するSS等の文章類を掲示しております。
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**グレイ様作『彼が国民になった理由――もしくは、とある王国...
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「ふう、久し振りだな……」
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いつまでも続くと思われた砂漠に通る一本の道。それはにゃ...
勿論この道は交易にのみ使われているのではなく、旅行者の...
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「羅幻王国……か」
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一昔前はまだ弱小だったこの国も、今では前述したその技術...
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「まあ、まだもう少しあるし……腹も減ったから、休憩するか」
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頭と言わず全身に巻き付けられた灰色のターバンにマントと...
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「確かここらあたりに……お、あったあった」
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砂の丘陵だらけの周りを見渡す……と、少し離れたところに、...
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「町に入る前にちょっと小綺麗にしないと……って、ん?」
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近づいていくうちにそのオアシスが全貌を覗かせる……が、そ...
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「先客か……いや、あれは……軍隊か?」
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砂漠を走るのに判別が付きにくいようなカラーリングを施し...
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「……ま、いいか」
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少し逡巡していたものの、気にしないことに決めたのか、再...
オアシスの泉の調査だろうか、後付けされたクロウラーの後...
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「はーい、それくらいで良いです。速やかに撤収作業お願い。...
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そんな声が聞こえてきた。どうも作業自体は終わったようだ...
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(……こんな所でそんな格好……いや待て、さっきの声にも聞き覚...
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彼女まで数メートルといったところで、彼は声を掛けること...
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「失礼ですが、蓮田屋藤乃さんですか?」
「あら……どなたかしら?」
「やっぱり、間違いない」
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『蓮田屋藤乃』と呼ばれた女性は、笑顔ながらも微かに怪訝...
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「あ……その瞳、その声……」
「お久しぶりです」
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そう言いながら彼は、ターバンと顔を覆った布を外して蓮田...
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「……グレイさん!?」
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§ § §
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それから数時間後。
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「出来ました。最終チェックお願いします」
「じゃ、次はこれをお願いしますね」
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ここは羅幻王国のとある執務室。そこは先般発表された戦時...
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「グレイさん、これ最新の書式フォーマットです。目を通して...
「わかりました。えーっと?」
「四条です。挨拶は後ほど改めて」
「参謀、広報用の教育機関のゲラが上がりました」
「じゃあグレイさん、これもお願いします」
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旅装束のまま……と思いきや、彼の姿は黒いスーツに包まれて...
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「蓮田屋さん?」
「何でしょう?」
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そして彼の席の上座には蓮田屋嬢。恐るべきスピードで山の...
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「俺、なんで仕事してるんですかね?」
「忙しいんですもの♪」
「あ、寛さん……だっけ、完了です。少し寂しかったから適当に...
「了解、助かるよグレイさん。正直こういうのは俺の仕事じゃ...
「じゃ、こっちの書類にサインお願いできるかしら。それから...
「わかりました。で、蓮田屋さん」
「何でしょう?」
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目の前に置かれたPCに送り込まれたデータを処理しながら、...
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「俺、なんでいきなり宮殿で重要書類の処理をしてるんですか...
「適材適所ですもの♪」
「……送信完了です。間違いはないと思います」
「ご苦労様。とりあえずお食事をしてきて下さいな。話は通し...
「わかりました」
#BR
後ろ手に修羅場の扉を閉めて、そのままもたれかかるグレイ。
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「……おかしいなあ。久しぶりに会ったから食事でもって話だっ...
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……人が良いにも程がある。
砂漠での邂逅の後、蓮田屋嬢に誘われるまま彼が連れてこら...
彼が蓮田屋藤乃嬢と出会ったのは、まだ彼女が流浪の貿易商...
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「まさか一国の参謀になってたなんて……当然といえば当然か」
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記憶を辿ると、出てくるわ出てくるわ彼女の極悪非道の手口...
そして今回も、グレイはまんまと彼女に乗せられてしまった...
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「まあ、いつもの事か」
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一つ溜息をついてグレイは食堂へと向かう。
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「そういえば、どこにあるんだ、食堂?」
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§ § §
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「あらン? 見ない顔ねン」
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なんとか食堂を見つけ、唐揚げ定食特盛りと鳥南蛮を瞬速で...
そして急いで執務室に戻る途中に、声を掛けられた。
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(え!?)
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顔を向けると、そこには科白からは想像もつかない、白い毛...
その傍らにはうって変わって宮殿正装に身を包んだ穏和な顔...
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「なになにぃ? 仏頂面は駄目よン。ファーストインプレッシ...
「……失礼いたしました。癖なもので」
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動揺を隠すために仏頂面になるのが彼の癖らしい。
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「グレイと申します。蓮田屋さんと既知でして、お邪魔させて...
「聞いてるわ、あなたがグレイさんね。私はかちゅーしゃ。以...
「私はルクス。ようこそ、歓迎いたします。では」
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笑顔のまま、手をひらひらさせて去っていくヨマ氏と、柔ら...
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(……かちゅーしゃって確か……)
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先程扱っていた書類に何度も出てきた名前。それも、二人と...
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(かちゅーしゃ前摂政!? ルクスって……ルクス宰相か!?)
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改めてとんでもない所に連れてこられた事を認識したグレイ...
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「あらあらグレイさん、そんな所で何をなさってるの?」
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そこに現れる蓮田屋嬢。手には分厚い書類の束を抱えていた。
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「あ、いえ。丁度今、かちゅーしゃ前摂政とルクス宰相が通ら...
「あら、一つ手間が省けました。それでは付いてきて下さいな」
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毛足の深い絨毯の上を颯爽と歩く、ビジネススーツの眼鏡美...
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「でも、お陰で助かります。ふふ、相変わらずの働きっぷりで...
「単に年喰ってるだけですよ。経験だけはやたらとありますか...
「謙遜なさらなくていいですわよ……相変わらず、転々としてい...
「……何でも屋はまだ卒業できそうにないですね」
「……そうですの」
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彼は今、事務仕事から現場処理までそつなくこなす“何でも屋...
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「ますます好都合です♪」
「何か仰いました?」
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§ § §
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「ほう、そなたがグレイか。話は参謀から聞いておるぞ?」
「お初にお目に掛かります。女王陛下におかれましては、ご機...
「固い挨拶はいいにゃ」
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そして、連れてこられたここは国王の執務室。
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「……蓮田屋さん?」
「何でしょう?」
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小声で横に並んでいる蓮田屋嬢に話しかけるグレイ。その顔...
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「俺、なんで女王様と謁見してるんでしょう?」
「それが筋ですもの♪」
「何を小声でしゃべってるんにゃ?」
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そう言いながらも羅幻王国国王・羅幻雅貴伯爵夫人は、るん...
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「よくぞ我が元に来てくれた。心から歓迎するにゃっ」
「有り難きお言葉。本日より……」
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しばらく滞在させて頂きます、とグレイが言おうとしたその...
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「今日より明日は、そなたと共に共に和して自由の旗に栄光を...
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にこにこと、それはもうにこにこと笑顔でグレイの手を取り...
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「……蓮田屋さん?」
「何でしょう?」
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ひたすらに微笑ましい様子の女王を見て相好を崩すグレイで...
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「俺、なんでこんなに歓迎されてるんですかね?」
「即戦力ですもの♪」
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そう答えながら蓮田屋嬢は一枚の書類を取り出す。それは、...
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「……え!?」
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途中経過報告書と書かれていた紙が剥がれ、下に現れたのは...
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「うむうむ、とりあえずは文士として……そうじゃのう、参謀や...
「……微力ながら」
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失礼のないように何とかその一言を絞り出したグレイに、腕...
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「は・す・た・や・さん?」
「何でしょう?」
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器用に額に血管を浮かばせながらにっこり微笑み、グレイは...
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「俺、なんで“また”はめられたんですかね?」
「ふふ、宿命ですもの♪」
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こうしてグレイは、羅幻王国の国民……いや雑用係として日夜...
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「給料は鶏肉でいいと聞いたが、まことか?」
「身命を惜しまず勤めさせて頂きます」
「……クス」
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#hr
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**岩元 宗様作『羅幻王国のとある一日 〜ルクス篇〜』 [#cf6...
宇宙=ネットと言う現代。
にゃんにゃん共和国の西に羅幻王国という藩国がある
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そしてここはおなじみの羅幻宮殿。
その宮殿の尖塔にある蓮田屋藤乃の執務室。
たいてい、ここから物語はスタートする。
#BR
「通貨ですって?」
#BR
蓮田屋藤乃はその脚線美が目立つ脚を組みかえて訊いた。
軽く眼鏡をあげる。
#BR
その机の上には大量の書類が乗っていた。
処理済と未処理がしっかりと分けられており、未処理より処...
この辺で彼女の優秀さが伺える。
それ以外には特に何も無い。シンプル・イズ・ベストである。
#BR
「はい。 藩内通貨です」
#BR
ルクスは手にある書類をみせた。
何度も推敲を重ねて、やっと要点がまとまった書類ができた。
蓮田は受け取り、眼鏡を軽くあげて読んだ。
今日もスーツ姿である。 キャリアウーマンという女教師に...
#BR
サラリと読み終わると、うなづいて微笑む。
#BR
「なるほどね」
「それでどうでしょうか?」
「そうね。 陛下にはお伺いは?」
「まだです。蓮田さんの許可を戴いてからと思いまして」
#BR
ルクスは順番を守る男であった。
#BR
「私の方は特に異論はないわね。これでいいと思うわ」
#BR
蓮田はニッコリと微笑んで書類を返した。
受け取ってルクスは微笑む。認められて嬉しかった。
#BR
「ありがとうございます」
「よく出来ているし、ええ、きっと通ると思うわ。」
#BR
蓮田は眼鏡をくいっとあげた。
#BR
「頑張ってね」
「はい! ありがとうございます」
「これが認められれば、藩国も活性化するわね。期待していま...
「はいっ!」
#BR
そう見送られ、ルクスは意気揚々と部屋を出て行った。
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#BR
さて場所が変わって、ここは宮殿廊下。
ここにひょーん。 ひょーん。 と奇妙な歩き方をする人物...
カイゼル髭が目立つ元・摂政。 かちゅーしゃである。
#BR
「ひょーん。 ひょーん」
#BR
本当に口で言っていた。
#BR
「うーむ。天才としてここはやはり、でも天才だからな」
#BR
そこにブツブツとおなじみのドクター無畏が歩いてきた。
#BR
「ひょーん。ひょーん」
「天才だから天才だとして、天才なら如何に?」
#BR
二人はそうやってぶつからずにすれ違い、ハッと立ち止まっ...
#BR
「そうだわー」
「そうだ」
#BR
二人は同時に頷き(互いの顔を見ず)
#BR
「そうだわーん。 貨幣だわー」
「そうだ。 天才通貨だ」
#BR
と言って、そこで初めて互いに気付いた。
#BR
「今、なんですってー?」
「ほほう。 この天才のアイデアを盗るつもりか」
#BR
二人は睨み合った。
こいつは敵だと思う。
そういえば、この二人が激突するのは始めてである。
バッとかちゅーしゃは離れて、妙な構えをとった。
片足をあげて、両手をちょいちょいと振り回す。 なにかの...
対してドクター無畏は、懐から奇妙な銀色の流線型をした何...
#BR
風が吹いた。
西部劇でお馴染みの草が丸まったものが転がり、渋いギター...
#BR
「…………」
「…………」
#BR
沈黙が続いた。
少し長い沈黙だった。
二人は同時にこう思っていた。
#BR
(動いたら死ぬ!)
#BR
というかふたりとも殺す気ですか。
そういうわけで、妙に緊迫した空気が張り詰める。
渋いギターの演奏も吹く風かも、二人の心情+演出効果で強...
#BR
すると、そこにルクスの姿が見えた。 こっちへ一直線に向...
キーーーーンと、書類を手に走ってきて、対峙している二人...
#BR
「ぎゃわあーん!?」
「てんさいぃー!?」
#BR
面白く転倒する二人。
というか、ドクター無畏。 なんだその叫び声は。
#BR
ちなみに、そのときのルクスの成功要素には【目的に向かっ...
また【よく周囲を見ない】【意外と力がある】なども抽出さ...
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「むうぅ! Aの魔法陣であるかっ!」
#BR
どこかでグレイ番長は何かを感じてそう言った。
#BR
「な、なーんなのよー!」
「天才に対して、無礼な」
#BR
二人は立ち上がり、ルクスの後を追った。
ルクスは途中で壁を蹴って走り、階段を無視して玉座の間へ...
その数分後をヨマとドクター無畏が追いかけてくる。
#BR
玉座の間。
その少し大きすぎる玉座に女性……もとい女の子が座っていた。
プラーン。 プラーン。 と、脚を振っている。
羅幻藩王だ。
#BR
「あーつまんない。 なんか暇だーぞ、こんちくしょうめぇ」
#BR
羅幻藩王は不機嫌だった。彼女は退屈していた。
#BR
「暇だったら暇だーぞ。 にゃんにゃろめぇー」
「陛下っ! 陛下っ!」
#BR
バターンと扉が勢いよく開いて、ルクスが現れた。
#BR
「ルクス宰相?」
「陛下。 無礼なのは申し訳ありません。 これを見てくれま...
#BR
ルクス。 挨拶も早々、持っていた書類を羅幻藩王に渡す。
#BR
「なに、これ?」
「藩内通貨です。 ぜひ御目通りをお願いします」
「ふーん」
#BR
パラパラと書類をめくって読む。ふむふむ。なるほど。なる...
#BR
「どうですか?」
「うん。 なんか小難しいけど良いアイデアね。 いいわ。 ...
「本当ですかっ! やったーありがとうございます。」
#BR
そう、これで終われば万々歳。
だがそこで終わらないのが、この物語。
#BR
『待ったぁっ!』
『異議あり!』
#BR
「だ、誰だっ! って…………かちゅーしゃさんにドクター無畏……」
#BR
ルクスは愕然とした。
うわーなんだ、この絶妙な組み合わせとか頭を抱える。
#BR
「あら、ふたりとも」
「お待ち、その通貨アイデアはわーたしが考えたもの」
「それはこの天才の天才的な閃きのアイデアだ。」
#BR
二人はポーズをとって言った。
#BR
「…………じゃあ頼むわね。 ルクス宰相」
「はい。 陛下」
『ちょっ、ちょっと! ちょっと! にゃんだ。 にゃんだと...
#BR
実に息がピッタリだった。
#BR
「なんなのよ。 もーにゃんにゃろうー」
「何がやりたいんですか。 二人とも」
#BR
ムッとする藩王と半眼であきれるルクス。
#BR
「う、視線が冷たいわねえーん」
「天才も凍りそうだ」
「あんたらウザイのよ。 妙にキャラが濃いし」
「人気もあるそうですし」
「マジで!?」
「天才だからなっ!」
#BR
妙なくねりセクシーポーズをとるヨマ。
そして親指を立てて、キラリとドクター無畏は瞳を光らせた。
#BR
「……なんか腹立つわね。 それでなんなのよ」
#BR
羅幻藩王は深く溜息をついた。
#BR
「言っておくけど、通貨はルクス宰相のアイデアだからね。 ...
「えっ? えーと……あっ陛下、最近太ったー?」
#BR
ガコン。
あぁーれぇーまぁーあぁーと、言ったヨマの足元が開いて、...
#BR
「あわわっ」
「太ってないわよっ! はい次っ」
#BR
ちょっとがるるになる。猫なのにがるるである。
#BR
「て」
#BR
ガコン。
ドクター無畏の足元が無くなり、ヒューーーーーーと彼も落...
#BR
「よし終わり。 じゃあ通貨発行の方を上へ持っていくから」
「は、はい。 よろしくおねがいします。」
#BR
ルクスは自分が常識的なキャラで良かったと心底から安堵し...
そしてこれからもこうやって巻き込まれるのかと、苦笑した...
#BR
#BR
こうして通貨はルクス通貨として羅幻藩国で使用されること...
#BR
#BR
後日談。
#BR
「天に我あり。 漢ならばぁっ! 真に漢ならばっ!」
「……あららん。 グレイ番長。 なんでここにいるのー?」
「ああ、私は天才なのに。 どうして天才なのに! ビバ、天...
#BR
何故か暗い穴の底に居る三人。
ヨマは見上げた。
何も見えず。あららん。深いわねーとか暢気だった。
ドクター無畏は何故か白衣を翻して、天才。天才。といつも...
まあ、テンションはあまり変わっていない。
そして中心に何故かどうしてグレイ番長。
ガクラン。割れた学帽。荒縄ベルトに吊り下げられた鎖。
下駄を履いて、かっこちょいいグラサンをしている。
いつもはスーツらしい。
#BR
「うむ。 答えるのが漢なり! 落ちたからであるっ!」
#BR
両手を組んで力強くグレイ番長。今日も絶好調だった。
#BR
とりあえず少しの間は羅幻宮殿は平和だったとか。
#BR
#BR
終わり。
#BR
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#BR
**グレイ様作『陸軍招集前夜』 [#hdd0c0ed]
わんわん帝國暦211年1月14日未明……にゃんにゃんの人達...
#BR
場所は羅幻王国宮殿、参謀長執務室。ルクス宰相はその日の...
#BR
「………」
「……あれ?」
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返事がない。確か彼女は『遅くまで作業にかかります』と言...
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「おかしいなぁ」
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再びノック……返事なし。ルクスは失礼と思いつつ、ドアノブ...
#BR
「失礼します」
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そう告げて入るルクスの視界には、椅子に座り、硬い表情で...
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「どうしました? 軍師殿」
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その声で初めて気づいたようで、蓮田屋女史はルクスの方に...
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「あら、宰相閣下……気がつきませんでしたわ」
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そう言いながら立ち上がると、応接セットにルクスを促す。自...
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「珍しい事もあるもんですね、軍師殿がノックに気づかないな...
「お恥ずかしいですわ」
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傍らにあるキッチンセットから二人分の珈琲を持ってルクス...
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「何か……ありましたか」
「これを」
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ルクスに手渡されたのは、先程彼女が見入っていた書類。そ...
#BR
「来ましたか……」
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その書類の見出しには、こう書かれていた。「陸軍招集」と。
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『陸軍招集前夜』
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「出撃メンバーはもうお決めになられましたか」
「ええ……私が陣頭指揮を執ります。それと……今回は宰相閣下に...
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そう告げた蓮田屋女史の表情を見てルクスは、この度の出撃...
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「おお、それは腕がなりますね」
「……え?」
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ルクスのそのあっけらかんとした返答に、キョトンとする蓮...
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「事務仕事にもそろそろ飽きてきましたしね、いい機会です。...
「それに?」
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小首を傾げて訪ねる蓮田屋女史。その表情も相まって、ルク...
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「ゴ、ゴホン。私がいなくなっても大丈夫なように体制は整え...
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そんな己の劣情を恥じるように一つ咳払いをして、できるだ...
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「……なら心配いりませんね」
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蓮田屋女史はそう言ってはんなりと微笑み、珈琲を口にする...
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「参考までに聞きますが、宰相代理には誰を推すおつもりです...
「ええ、四方無畏卿か四条あや卿です。この二人なら、私がど...
「……ちなみにその二人共、出撃メンバーなんですけどね」
「え!? ちょっ」
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一方、その頃。宮殿から西の位置にある駐屯基地の武器庫で...
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「羅須侘さーん」
「む?」
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そんな彼の元に小柄な人影が小走りに近づいて行く。ぱたぱ...
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「おう、茉乃瀬殿。どうした?」
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茉乃瀬桔梗――この国随一の絵筆使いにして、眼鏡好きの眼鏡...
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「出ましたよー、出撃命令」
「そうか! よし。今度は派手にやれそうだな」
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ここ最近、冒険には出たものの、その内容にはかなり辟易し...
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「うー、でもなんか……やっぱり怖いですねえ」
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一方、口に指を当てて呟く茉乃瀬だが、台詞の割にはゆった...
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「怖くて当たり前だ」
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そんな彼女に微笑みかける羅須侘。
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「肝心なのは、その怖さに負けない勇気を持つことだ。恐怖を...
「なるほどー」
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流石は元一流の傭兵と言ったところか。その説得力に茉乃瀬...
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「茉乃瀬殿もしっかり準備を。装備もそうだが、心の、な」
「はいー」
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また、同時刻。宮殿内の食堂では、グレイが遅い夕食を摂っ...
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「ふう……あまり食欲がないなあ」
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そう言っている割には、目の前の皿には食べ終わった後の骨...
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「へえ、珍しい」
「って、それだけ食べれば上等でしょう」
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そこに現れたのは、岩元宗とシノブ……奇しくも前回の食料増...
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「どうしたんすか? らしくないっすねえ」
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言いながら、買ってきたラーメンをぞぞぞとすする宗。
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「動員されて、怖じ気づいたんですか?」
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にやりと笑いながらサンドイッチをかじるシノブ……勿論台詞...
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「ああ、怖じ気づいてる」
「ぶふっ!」
「げふっ」
#BR
グレイの言葉に、むせる二人。宗などは、鼻から麺を吹き出...
#BR
「なんだ? 驚くトコか?」
「がっはげっはぐっは」
「ああ、もう。すみません、皮肉でした。そう返されるとは思...
「いや、本当にそうなんだけどな」
#BR
神妙な面持ちで告げるグレイ。
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「ほういうほひははいはいのほはれるんらへほは」
「げっほげっほごっほ」
「どこが食欲がないんだか……」
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勿論、食べながらだと神妙の「し」の字も感じられないが。
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「んんっ、こういう時は大体残らされるからね。今回は君達の...
「べ、別にそんな、俺なんか……ごほ」
「……だから嫌いなんですよ、あなたなんて」
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またまたその頃。宮殿から少し離れた植物園にあるビニール...
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「うわ、寒いなここは」
「ん? ぱんくす卿……か」
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砂漠の国である羅幻王国では冬野菜が取れない。その為にこ...
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「見ろよ、いい感じで育ってる。今年もいいのができそうだ」
「おう、卿の作った白菜は評判がいいからな。またお隣から、...
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ここでお隣とは勿論、鍋の国である。
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「そうか……いや、もしかするとこの子達の嫁入りに立ち会えな...
「知ってたのか」
「ああ。大きな戦なんだろう?」
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少し表情が翳る。彼には戦場よりも自然が、銃よりも鍬が似...
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「お前さんは生き延びるさ。『マギエル』候補の筆頭が何を言...
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敵の動きや攻撃を読み、華麗にかわしながら陽動作戦などを...
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「戻ればお前さんと俺で、あの黄色いジャンパーが着れるよう...
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立ち上がりながら寛は、ぱんくすに向かって微笑みを浮かべ...
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ところは宮殿に戻って、国王執務室に向かう廊下をぽてぽて...
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「ふ、此度の戦さ、この天才がおれば勝利は間違いないな」
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「いや、そんなこと思えるなんて、すっごい馬鹿ですね。流石...
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漏れるため息も隠そうともせずに首を振るコウだったが、
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そしてその日の0700時。
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羅幻王国軍は、共和国軍に合流する為に宮殿から出発した……。
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終了行:
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近づいていくうちにそのオアシスが全貌を覗かせる……が、そ...
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「先客か……いや、あれは……軍隊か?」
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砂漠を走るのに判別が付きにくいようなカラーリングを施し...
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「……ま、いいか」
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少し逡巡していたものの、気にしないことに決めたのか、再...
オアシスの泉の調査だろうか、後付けされたクロウラーの後...
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「はーい、それくらいで良いです。速やかに撤収作業お願い。...
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そんな声が聞こえてきた。どうも作業自体は終わったようだ...
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(……こんな所でそんな格好……いや待て、さっきの声にも聞き覚...
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彼女まで数メートルといったところで、彼は声を掛けること...
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「失礼ですが、蓮田屋藤乃さんですか?」
「あら……どなたかしら?」
「やっぱり、間違いない」
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『蓮田屋藤乃』と呼ばれた女性は、笑顔ながらも微かに怪訝...
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「あ……その瞳、その声……」
「お久しぶりです」
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そう言いながら彼は、ターバンと顔を覆った布を外して蓮田...
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「……グレイさん!?」
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#BR
§ § §
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それから数時間後。
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「出来ました。最終チェックお願いします」
「じゃ、次はこれをお願いしますね」
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ここは羅幻王国のとある執務室。そこは先般発表された戦時...
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「グレイさん、これ最新の書式フォーマットです。目を通して...
「わかりました。えーっと?」
「四条です。挨拶は後ほど改めて」
「参謀、広報用の教育機関のゲラが上がりました」
「じゃあグレイさん、これもお願いします」
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旅装束のまま……と思いきや、彼の姿は黒いスーツに包まれて...
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「蓮田屋さん?」
「何でしょう?」
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そして彼の席の上座には蓮田屋嬢。恐るべきスピードで山の...
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「俺、なんで仕事してるんですかね?」
「忙しいんですもの♪」
「あ、寛さん……だっけ、完了です。少し寂しかったから適当に...
「了解、助かるよグレイさん。正直こういうのは俺の仕事じゃ...
「じゃ、こっちの書類にサインお願いできるかしら。それから...
「わかりました。で、蓮田屋さん」
「何でしょう?」
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目の前に置かれたPCに送り込まれたデータを処理しながら、...
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「俺、なんでいきなり宮殿で重要書類の処理をしてるんですか...
「適材適所ですもの♪」
「……送信完了です。間違いはないと思います」
「ご苦労様。とりあえずお食事をしてきて下さいな。話は通し...
「わかりました」
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後ろ手に修羅場の扉を閉めて、そのままもたれかかるグレイ。
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「……おかしいなあ。久しぶりに会ったから食事でもって話だっ...
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……人が良いにも程がある。
砂漠での邂逅の後、蓮田屋嬢に誘われるまま彼が連れてこら...
彼が蓮田屋藤乃嬢と出会ったのは、まだ彼女が流浪の貿易商...
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「まさか一国の参謀になってたなんて……当然といえば当然か」
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記憶を辿ると、出てくるわ出てくるわ彼女の極悪非道の手口...
そして今回も、グレイはまんまと彼女に乗せられてしまった...
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「まあ、いつもの事か」
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一つ溜息をついてグレイは食堂へと向かう。
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「そういえば、どこにあるんだ、食堂?」
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§ § §
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「あらン? 見ない顔ねン」
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なんとか食堂を見つけ、唐揚げ定食特盛りと鳥南蛮を瞬速で...
そして急いで執務室に戻る途中に、声を掛けられた。
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(え!?)
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顔を向けると、そこには科白からは想像もつかない、白い毛...
その傍らにはうって変わって宮殿正装に身を包んだ穏和な顔...
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「なになにぃ? 仏頂面は駄目よン。ファーストインプレッシ...
「……失礼いたしました。癖なもので」
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動揺を隠すために仏頂面になるのが彼の癖らしい。
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「グレイと申します。蓮田屋さんと既知でして、お邪魔させて...
「聞いてるわ、あなたがグレイさんね。私はかちゅーしゃ。以...
「私はルクス。ようこそ、歓迎いたします。では」
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笑顔のまま、手をひらひらさせて去っていくヨマ氏と、柔ら...
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(……かちゅーしゃって確か……)
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先程扱っていた書類に何度も出てきた名前。それも、二人と...
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(かちゅーしゃ前摂政!? ルクスって……ルクス宰相か!?)
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改めてとんでもない所に連れてこられた事を認識したグレイ...
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「あらあらグレイさん、そんな所で何をなさってるの?」
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そこに現れる蓮田屋嬢。手には分厚い書類の束を抱えていた。
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「あ、いえ。丁度今、かちゅーしゃ前摂政とルクス宰相が通ら...
「あら、一つ手間が省けました。それでは付いてきて下さいな」
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毛足の深い絨毯の上を颯爽と歩く、ビジネススーツの眼鏡美...
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「でも、お陰で助かります。ふふ、相変わらずの働きっぷりで...
「単に年喰ってるだけですよ。経験だけはやたらとありますか...
「謙遜なさらなくていいですわよ……相変わらず、転々としてい...
「……何でも屋はまだ卒業できそうにないですね」
「……そうですの」
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彼は今、事務仕事から現場処理までそつなくこなす“何でも屋...
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「ますます好都合です♪」
「何か仰いました?」
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§ § §
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「ほう、そなたがグレイか。話は参謀から聞いておるぞ?」
「お初にお目に掛かります。女王陛下におかれましては、ご機...
「固い挨拶はいいにゃ」
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そして、連れてこられたここは国王の執務室。
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「……蓮田屋さん?」
「何でしょう?」
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小声で横に並んでいる蓮田屋嬢に話しかけるグレイ。その顔...
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「俺、なんで女王様と謁見してるんでしょう?」
「それが筋ですもの♪」
「何を小声でしゃべってるんにゃ?」
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そう言いながらも羅幻王国国王・羅幻雅貴伯爵夫人は、るん...
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「よくぞ我が元に来てくれた。心から歓迎するにゃっ」
「有り難きお言葉。本日より……」
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しばらく滞在させて頂きます、とグレイが言おうとしたその...
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「今日より明日は、そなたと共に共に和して自由の旗に栄光を...
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にこにこと、それはもうにこにこと笑顔でグレイの手を取り...
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「……蓮田屋さん?」
「何でしょう?」
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ひたすらに微笑ましい様子の女王を見て相好を崩すグレイで...
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「俺、なんでこんなに歓迎されてるんですかね?」
「即戦力ですもの♪」
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そう答えながら蓮田屋嬢は一枚の書類を取り出す。それは、...
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「……え!?」
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途中経過報告書と書かれていた紙が剥がれ、下に現れたのは...
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「うむうむ、とりあえずは文士として……そうじゃのう、参謀や...
「……微力ながら」
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失礼のないように何とかその一言を絞り出したグレイに、腕...
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「は・す・た・や・さん?」
「何でしょう?」
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器用に額に血管を浮かばせながらにっこり微笑み、グレイは...
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「俺、なんで“また”はめられたんですかね?」
「ふふ、宿命ですもの♪」
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こうしてグレイは、羅幻王国の国民……いや雑用係として日夜...
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「給料は鶏肉でいいと聞いたが、まことか?」
「身命を惜しまず勤めさせて頂きます」
「……クス」
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**岩元 宗様作『羅幻王国のとある一日 〜ルクス篇〜』 [#cf6...
宇宙=ネットと言う現代。
にゃんにゃん共和国の西に羅幻王国という藩国がある
#BR
そしてここはおなじみの羅幻宮殿。
その宮殿の尖塔にある蓮田屋藤乃の執務室。
たいてい、ここから物語はスタートする。
#BR
「通貨ですって?」
#BR
蓮田屋藤乃はその脚線美が目立つ脚を組みかえて訊いた。
軽く眼鏡をあげる。
#BR
その机の上には大量の書類が乗っていた。
処理済と未処理がしっかりと分けられており、未処理より処...
この辺で彼女の優秀さが伺える。
それ以外には特に何も無い。シンプル・イズ・ベストである。
#BR
「はい。 藩内通貨です」
#BR
ルクスは手にある書類をみせた。
何度も推敲を重ねて、やっと要点がまとまった書類ができた。
蓮田は受け取り、眼鏡を軽くあげて読んだ。
今日もスーツ姿である。 キャリアウーマンという女教師に...
#BR
サラリと読み終わると、うなづいて微笑む。
#BR
「なるほどね」
「それでどうでしょうか?」
「そうね。 陛下にはお伺いは?」
「まだです。蓮田さんの許可を戴いてからと思いまして」
#BR
ルクスは順番を守る男であった。
#BR
「私の方は特に異論はないわね。これでいいと思うわ」
#BR
蓮田はニッコリと微笑んで書類を返した。
受け取ってルクスは微笑む。認められて嬉しかった。
#BR
「ありがとうございます」
「よく出来ているし、ええ、きっと通ると思うわ。」
#BR
蓮田は眼鏡をくいっとあげた。
#BR
「頑張ってね」
「はい! ありがとうございます」
「これが認められれば、藩国も活性化するわね。期待していま...
「はいっ!」
#BR
そう見送られ、ルクスは意気揚々と部屋を出て行った。
#BR
#BR
さて場所が変わって、ここは宮殿廊下。
ここにひょーん。 ひょーん。 と奇妙な歩き方をする人物...
カイゼル髭が目立つ元・摂政。 かちゅーしゃである。
#BR
「ひょーん。 ひょーん」
#BR
本当に口で言っていた。
#BR
「うーむ。天才としてここはやはり、でも天才だからな」
#BR
そこにブツブツとおなじみのドクター無畏が歩いてきた。
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「ひょーん。ひょーん」
「天才だから天才だとして、天才なら如何に?」
#BR
二人はそうやってぶつからずにすれ違い、ハッと立ち止まっ...
#BR
「そうだわー」
「そうだ」
#BR
二人は同時に頷き(互いの顔を見ず)
#BR
「そうだわーん。 貨幣だわー」
「そうだ。 天才通貨だ」
#BR
と言って、そこで初めて互いに気付いた。
#BR
「今、なんですってー?」
「ほほう。 この天才のアイデアを盗るつもりか」
#BR
二人は睨み合った。
こいつは敵だと思う。
そういえば、この二人が激突するのは始めてである。
バッとかちゅーしゃは離れて、妙な構えをとった。
片足をあげて、両手をちょいちょいと振り回す。 なにかの...
対してドクター無畏は、懐から奇妙な銀色の流線型をした何...
#BR
風が吹いた。
西部劇でお馴染みの草が丸まったものが転がり、渋いギター...
#BR
「…………」
「…………」
#BR
沈黙が続いた。
少し長い沈黙だった。
二人は同時にこう思っていた。
#BR
(動いたら死ぬ!)
#BR
というかふたりとも殺す気ですか。
そういうわけで、妙に緊迫した空気が張り詰める。
渋いギターの演奏も吹く風かも、二人の心情+演出効果で強...
#BR
すると、そこにルクスの姿が見えた。 こっちへ一直線に向...
キーーーーンと、書類を手に走ってきて、対峙している二人...
#BR
「ぎゃわあーん!?」
「てんさいぃー!?」
#BR
面白く転倒する二人。
というか、ドクター無畏。 なんだその叫び声は。
#BR
ちなみに、そのときのルクスの成功要素には【目的に向かっ...
また【よく周囲を見ない】【意外と力がある】なども抽出さ...
#BR
「むうぅ! Aの魔法陣であるかっ!」
#BR
どこかでグレイ番長は何かを感じてそう言った。
#BR
「な、なーんなのよー!」
「天才に対して、無礼な」
#BR
二人は立ち上がり、ルクスの後を追った。
ルクスは途中で壁を蹴って走り、階段を無視して玉座の間へ...
その数分後をヨマとドクター無畏が追いかけてくる。
#BR
玉座の間。
その少し大きすぎる玉座に女性……もとい女の子が座っていた。
プラーン。 プラーン。 と、脚を振っている。
羅幻藩王だ。
#BR
「あーつまんない。 なんか暇だーぞ、こんちくしょうめぇ」
#BR
羅幻藩王は不機嫌だった。彼女は退屈していた。
#BR
「暇だったら暇だーぞ。 にゃんにゃろめぇー」
「陛下っ! 陛下っ!」
#BR
バターンと扉が勢いよく開いて、ルクスが現れた。
#BR
「ルクス宰相?」
「陛下。 無礼なのは申し訳ありません。 これを見てくれま...
#BR
ルクス。 挨拶も早々、持っていた書類を羅幻藩王に渡す。
#BR
「なに、これ?」
「藩内通貨です。 ぜひ御目通りをお願いします」
「ふーん」
#BR
パラパラと書類をめくって読む。ふむふむ。なるほど。なる...
#BR
「どうですか?」
「うん。 なんか小難しいけど良いアイデアね。 いいわ。 ...
「本当ですかっ! やったーありがとうございます。」
#BR
そう、これで終われば万々歳。
だがそこで終わらないのが、この物語。
#BR
『待ったぁっ!』
『異議あり!』
#BR
「だ、誰だっ! って…………かちゅーしゃさんにドクター無畏……」
#BR
ルクスは愕然とした。
うわーなんだ、この絶妙な組み合わせとか頭を抱える。
#BR
「あら、ふたりとも」
「お待ち、その通貨アイデアはわーたしが考えたもの」
「それはこの天才の天才的な閃きのアイデアだ。」
#BR
二人はポーズをとって言った。
#BR
「…………じゃあ頼むわね。 ルクス宰相」
「はい。 陛下」
『ちょっ、ちょっと! ちょっと! にゃんだ。 にゃんだと...
#BR
実に息がピッタリだった。
#BR
「なんなのよ。 もーにゃんにゃろうー」
「何がやりたいんですか。 二人とも」
#BR
ムッとする藩王と半眼であきれるルクス。
#BR
「う、視線が冷たいわねえーん」
「天才も凍りそうだ」
「あんたらウザイのよ。 妙にキャラが濃いし」
「人気もあるそうですし」
「マジで!?」
「天才だからなっ!」
#BR
妙なくねりセクシーポーズをとるヨマ。
そして親指を立てて、キラリとドクター無畏は瞳を光らせた。
#BR
「……なんか腹立つわね。 それでなんなのよ」
#BR
羅幻藩王は深く溜息をついた。
#BR
「言っておくけど、通貨はルクス宰相のアイデアだからね。 ...
「えっ? えーと……あっ陛下、最近太ったー?」
#BR
ガコン。
あぁーれぇーまぁーあぁーと、言ったヨマの足元が開いて、...
#BR
「あわわっ」
「太ってないわよっ! はい次っ」
#BR
ちょっとがるるになる。猫なのにがるるである。
#BR
「て」
#BR
ガコン。
ドクター無畏の足元が無くなり、ヒューーーーーーと彼も落...
#BR
「よし終わり。 じゃあ通貨発行の方を上へ持っていくから」
「は、はい。 よろしくおねがいします。」
#BR
ルクスは自分が常識的なキャラで良かったと心底から安堵し...
そしてこれからもこうやって巻き込まれるのかと、苦笑した...
#BR
#BR
こうして通貨はルクス通貨として羅幻藩国で使用されること...
#BR
#BR
後日談。
#BR
「天に我あり。 漢ならばぁっ! 真に漢ならばっ!」
「……あららん。 グレイ番長。 なんでここにいるのー?」
「ああ、私は天才なのに。 どうして天才なのに! ビバ、天...
#BR
何故か暗い穴の底に居る三人。
ヨマは見上げた。
何も見えず。あららん。深いわねーとか暢気だった。
ドクター無畏は何故か白衣を翻して、天才。天才。といつも...
まあ、テンションはあまり変わっていない。
そして中心に何故かどうしてグレイ番長。
ガクラン。割れた学帽。荒縄ベルトに吊り下げられた鎖。
下駄を履いて、かっこちょいいグラサンをしている。
いつもはスーツらしい。
#BR
「うむ。 答えるのが漢なり! 落ちたからであるっ!」
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両手を組んで力強くグレイ番長。今日も絶好調だった。
#BR
とりあえず少しの間は羅幻宮殿は平和だったとか。
#BR
#BR
終わり。
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**グレイ様作『陸軍招集前夜』 [#hdd0c0ed]
わんわん帝國暦211年1月14日未明……にゃんにゃんの人達...
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場所は羅幻王国宮殿、参謀長執務室。ルクス宰相はその日の...
#BR
「………」
「……あれ?」
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返事がない。確か彼女は『遅くまで作業にかかります』と言...
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「おかしいなぁ」
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再びノック……返事なし。ルクスは失礼と思いつつ、ドアノブ...
#BR
「失礼します」
#BR
そう告げて入るルクスの視界には、椅子に座り、硬い表情で...
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「どうしました? 軍師殿」
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その声で初めて気づいたようで、蓮田屋女史はルクスの方に...
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「あら、宰相閣下……気がつきませんでしたわ」
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そう言いながら立ち上がると、応接セットにルクスを促す。自...
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「珍しい事もあるもんですね、軍師殿がノックに気づかないな...
「お恥ずかしいですわ」
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傍らにあるキッチンセットから二人分の珈琲を持ってルクス...
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「何か……ありましたか」
「これを」
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ルクスに手渡されたのは、先程彼女が見入っていた書類。そ...
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「来ましたか……」
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その書類の見出しには、こう書かれていた。「陸軍招集」と。
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『陸軍招集前夜』
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「出撃メンバーはもうお決めになられましたか」
「ええ……私が陣頭指揮を執ります。それと……今回は宰相閣下に...
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そう告げた蓮田屋女史の表情を見てルクスは、この度の出撃...
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「おお、それは腕がなりますね」
「……え?」
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ルクスのそのあっけらかんとした返答に、キョトンとする蓮...
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「事務仕事にもそろそろ飽きてきましたしね、いい機会です。...
「それに?」
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小首を傾げて訪ねる蓮田屋女史。その表情も相まって、ルク...
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「ゴ、ゴホン。私がいなくなっても大丈夫なように体制は整え...
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そんな己の劣情を恥じるように一つ咳払いをして、できるだ...
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「……なら心配いりませんね」
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蓮田屋女史はそう言ってはんなりと微笑み、珈琲を口にする...
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「参考までに聞きますが、宰相代理には誰を推すおつもりです...
「ええ、四方無畏卿か四条あや卿です。この二人なら、私がど...
「……ちなみにその二人共、出撃メンバーなんですけどね」
「え!? ちょっ」
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一方、その頃。宮殿から西の位置にある駐屯基地の武器庫で...
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「羅須侘さーん」
「む?」
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そんな彼の元に小柄な人影が小走りに近づいて行く。ぱたぱ...
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「おう、茉乃瀬殿。どうした?」
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茉乃瀬桔梗――この国随一の絵筆使いにして、眼鏡好きの眼鏡...
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「出ましたよー、出撃命令」
「そうか! よし。今度は派手にやれそうだな」
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ここ最近、冒険には出たものの、その内容にはかなり辟易し...
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「うー、でもなんか……やっぱり怖いですねえ」
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一方、口に指を当てて呟く茉乃瀬だが、台詞の割にはゆった...
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「怖くて当たり前だ」
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そんな彼女に微笑みかける羅須侘。
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「肝心なのは、その怖さに負けない勇気を持つことだ。恐怖を...
「なるほどー」
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流石は元一流の傭兵と言ったところか。その説得力に茉乃瀬...
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「茉乃瀬殿もしっかり準備を。装備もそうだが、心の、な」
「はいー」
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また、同時刻。宮殿内の食堂では、グレイが遅い夕食を摂っ...
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「ふう……あまり食欲がないなあ」
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そう言っている割には、目の前の皿には食べ終わった後の骨...
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「へえ、珍しい」
「って、それだけ食べれば上等でしょう」
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そこに現れたのは、岩元宗とシノブ……奇しくも前回の食料増...
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「どうしたんすか? らしくないっすねえ」
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言いながら、買ってきたラーメンをぞぞぞとすする宗。
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「動員されて、怖じ気づいたんですか?」
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にやりと笑いながらサンドイッチをかじるシノブ……勿論台詞...
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「ああ、怖じ気づいてる」
「ぶふっ!」
「げふっ」
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グレイの言葉に、むせる二人。宗などは、鼻から麺を吹き出...
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「なんだ? 驚くトコか?」
「がっはげっはぐっは」
「ああ、もう。すみません、皮肉でした。そう返されるとは思...
「いや、本当にそうなんだけどな」
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神妙な面持ちで告げるグレイ。
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「ほういうほひははいはいのほはれるんらへほは」
「げっほげっほごっほ」
「どこが食欲がないんだか……」
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勿論、食べながらだと神妙の「し」の字も感じられないが。
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「んんっ、こういう時は大体残らされるからね。今回は君達の...
「べ、別にそんな、俺なんか……ごほ」
「……だから嫌いなんですよ、あなたなんて」
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またまたその頃。宮殿から少し離れた植物園にあるビニール...
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「うわ、寒いなここは」
「ん? ぱんくす卿……か」
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砂漠の国である羅幻王国では冬野菜が取れない。その為にこ...
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「おう、卿の作った白菜は評判がいいからな。またお隣から、...
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羅幻王国軍は、共和国軍に合流する為に宮殿から出発した……。
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