イーディア・マヘスの初めて物語

あたし、猫型イーディアのマヘス。
出番少ないけど、これでもおかーさん・・・羅幻 雅貴を主とする、立派なイーディアなのだ〜♪
今日話すのは、あたしが初めてベッドから出たときのお話。

あ、ベッドっていうのはあたし達イーディアが育つ装置の事。
本当はいろいろなタイプがあるらしいんだけど、おとーさん・・・あたしの創造者、羅幻 神無はベッド型が一番良いと言ってる。
超古代のSF小説に出てきた、ポッドみたいなのはあまり好きじゃないって言ってた。
なんか、ポッドの中の、水の中で漂っているのを見ていると、ホルマリン漬けみたいだからって。
面白いよねぇ、おとーさんって。

おとーさんはイーディアマイスターなのに、イーディアをあまり作ってない。
あたし以外の猫型イーディアの『バステト』と『セシャト』、犬型イーディアの『ドゥアムトエフ』、『アヌビス』、おとーさんのイーディアである隼型の『ソカル』。
その、あたし達の後に生まれたのはまだ皆ベッドの中で寝てる。
それでもまだ開きベッドは3つはある。
いつか、おとーさんに聞いた。
「なんでいっぱい弟とか妹とか作らないの?」って。
そしたら言った。
「作り過ぎる必要がないからだ」って。
そして、おとーさんは時々イーディアを作る。
頼まれて作った子もいれば、どっかに消えていった子もいる。
多分主が決まったから船から出したのだろう。
そうでなきゃ、おとーさんはこの船から出そうとはしない。
優しいんだよね、おとーさんは。
でも、あたしはこの船の中以外にはあまり外を知らない。
どんなのかな、とは思うけど、恐いから行かない。
それに、船の中にだって新しい人達がたくさん入ってくる事がある。
でも、その前に必ず船は辛気くさくなっちゃうし、知っている人たちがちらほらこの船から消えてる。
なんでか知らないけど。

えっと、とりあえず話を戻すね。
あたしね、その時思いっきり良い夢を見てたんだ。
ぽかぽかとあったかいところでひなたぼっこしてた夢見てたの。
え?なんで船の外知らないのにひなたぼっこ知ってるのって?
船の中にも、ひなたぼっこできるところがあるの。
そこはねー、ちっちゃな公園になってて、お花が咲いたりするんだよ。
この船で一番そらに近い場所だから、知ってるでしょ?
でね、あたし一度起こされたんだ。
「おーい、外に出すぞ〜」って。
なんでかって思ったら、外に出るために体を慣らすのと体の検査をするんだって言ってたんだけど、あたしまだ寝たかったからおとーさんに言ったんだ。
おとーさんちょっと苦笑して、そんでまたあたし寝たんだ。
でねー、それからちょっとしたころかな?
どかん、って大きな音が響いたんだ。
水の中なのになんで、って聞かないでね。
だって、本当に聞こえたんだもん。
で、あたしびっくりして「助けて!」って叫んだんだ。
んでね、ゆうっくりと水が抜けてってあたしのベッドの天井がしゅうぅって上に上がってったんだ。
で、少しだけベッドの底が上がっておとーさんの手に抱え上げられるまで、あたし、ずーっと縮こまってた。
で、最初の最初に聞いた声が「あ、やっぱ縮こんだか」だよ〜?
おとーさんてどこかデリカシーないんだよね。
でもねー、おとーさんがね、体中拭いてくれて、この首の綺麗なリボンくれたんだ〜。
そんでね、あの大きな音何〜?って聞いたら、あたしが外に出るお祝いだからって、爆竹鳴らしちゃったんだって。
おとーさん、あたしがびっくりするからって必死に止めたらしいけど、その時はもう鳴らしちゃった後だったんだって。
やっぱり優しいよねぇ。
確か、えーっと・・・どこだっけ?
忘れちゃったけど、どっかのお祭りでは必ず爆竹を鳴らすんだって、カラスが教えてくれたの。
え?カラス? おかーさんの部下で、この船の仕事をしてるんだって。
あまり、よく知らないけど。

でね、「検査するぞ〜」って、あたしの体にいっぱいコードが取り付けられたの。
でもね、検査結果みたいなのが出たとき、なんだかおとーさん達難しい顔をしてた。
色々難しい話を周囲の人たちとしててね、カルテ・・・っていうのかな?
あれに何かいろいろ書いてた。
「失敗」とか色々聞こえたけど、失敗って悪い事なんだよね?
あたし、失敗だって。
でもおとーさんね、「何言ってやがる。俺の娘にケチつけんな」って物凄い形相で怒ってね、周囲の人達が必死で止めてたの。
そんときね、すんごく嬉しかった。
おとーさん、あたしの事を「娘」って言ったから。
ちゃんと、言ってくれたから。
でね、その後ね、おかーさんが来たんだよ。
「この子がマヘスか?」って言ってね、頭撫でてくれた。
「初めまして、マヘス。私がお前の主だ」って言ったから、あたしも言った。
『初めまして、おかーさん。あたし、マヘス』。
おかーさん目を丸くして思いっきり笑ってた。
おかーさんて、言っちゃ悪かったのかな〜?って首かしげてたらね・・・
「じゃあ、もう一度・・・初めまして、マヘス。私がおかーさんだ」って笑いながら言ったから、ああ、よかったんだな〜って思った。
それからずーっと、おかーさんて呼んでる。
バステトとか、セシャトはいつも『マスター』とか、『主』とか呼ぶけど、おかーさんで良いと思うもん。
だって、おかーさんはおかーさんだし、おとーさんはおとーさんだし、おにーさんはおにーさんなんだから。


とりあえず、こんなところかな?
え?もっと聞きたい?
ん〜、あたしね、これからお仕事が待っているんだ。
え?
お仕事って何って?
あたしのお仕事はね、バルグのおおまかな調整。
細かいところはおかーさんがやるんだけど、おおまかな部分までやっていると時間がたりないんだって。
あ、バステトが呼んでるし・・・じゃ、またね〜。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
後書き。
テーマは『初めて』と言われ、キャラは誰にしようかと思ったらマヘスが出てきました。
楽しかったんだけど、困った事が。
柏木様は、これに満足していただけるであろうか。
終わり方もなんだかなぁというものだし。(笑)
ぢつは、こんなのが出来たのはじめてだったりします。
聞き手はお読みになっている皆様、という設定・・・らしいです。